公務員賃下げは憲法違反
押し付けに怒り心頭だ
「人事院勧告に基づかないで国家公務員の賃金を削減する特例法は、憲法違反だ」―日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)は5月25日、国公労連と労働組合員241人が原告となって、4月からはじまった人事院勧告に基づかない給与カット分と慰謝料の支払いを求めて、国を相手に「公務員賃下げ違憲訴訟」を東京地裁に起こしました。宮垣忠委員長に聞きました。
東京地裁に提訴した国公労連
宮垣 忠委員長に聞く
民主、自民、公明の3党が“談合”して提出した給与臨時特例法によって、国家公務員の賃金は2年間にわたって平均7・8%引き下げられることになりました。課長・室長クラス以上は10%以上になり、これは懲戒処分の水準です。しかも、私たち労働者・労働組合の意見をまったく聞かず、人事院勧告(マイナス0・23%)にも基づかない給与臨時特例法の国会提出は、憲法とILO(国際労働機関)条約に違反し、労働者の基本的人権をじゅうりんするものです。
国家公務員は、なにか懲戒処分を受けるようなことでもしたのでしょうか。東日本大震災では、国の出先機関で働く国家公務員も身を粉にして不眠不休で救援・復旧にあたってきました。こうした道理のない賃金引き下げに対し、全国の職場は怒りに満ちあふれています。
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提訴のため東京地裁に向かう原告団。横断幕を持つ右から2人目が宮垣委員長 |
国の財政赤字の原因が人件費に
国家公務員の人件費が国の財政赤字の原因なのでしょうか。そうではありません。この10年間、自衛官を除く国家公務員の数は約80万人から30万人に減少し、賃金は年々下がり続けています。
「震災財源のために我慢しろ」というなら、政党助成金や米軍への思いやり予算などムダな支出を削るべきです。それもしないで、消費税増税のために「政府が自らの身を削る」と言って、限られた予算と人員のなかで国民の安全・安心のために一生懸命がんばっている国家公務員に犠牲を強い、賃金引き下げを押し付けることに怒りを禁じえません。
賃金については、労使交渉で決めるのがルールにもとづいたやり方です。しかし、こうした協約締結権を回復することもなく、一方的な不利益を国家公務員労働者に押し付けるやり方を見逃すことは断じてできません。そのため、国公労連と労働者は提訴に踏み切りました。
地域の経済にも多大な悪影響が
国公労連は全国食健連に加入し、農民連のみなさんとTPP参加反対のたたかいをともに取り組んできました。TPPは農林漁業ばかりでなく、医療や食の安全など「国のかたち」を変えるものであり、国民の生存権をおびやかす憲法違反の貿易協定です。労働者の生活と権利をまもる私たちのたたかいと共通しています。
私たち国公労連は、公務員の賃下げが625万人の労働者をはじめ地域経済にも多大な悪影響を及ぼすこと、消費税増税と社会保障改悪など国民犠牲の突破口であることなどを訴え、今回の裁判で、給与臨時特例法が憲法違反であることを認めさせるとともに、景気回復をめざす国民的な運動を発展させることを目的としています。法廷のなかだけでなく、広く国民のみなさんに訴えて勝利判決に結びつけていきたいと考えています。
全力でたたかう決意です。ぜひ、みなさんのご支援をお願いします。
(新聞「農民」2012.7.2付)
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