アメリカの食と農の現状
アメリカの食品産業の裏側に隠された問題点に迫るドキュメンタリー映画『フード・インク』のロバート・ケナー監督(アメリカ)が5月19日、都内で講演しました。その一部を紹介します。(主催は、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク)
米食品産業の裏側を暴いた
ドキュメンタリー映画『フード・インク』
ロバート・ケナー監督の講演から
栽培を画一化
この映画に出てくる「フードシステム」は非常に新しいシステムで、多国籍企業が一つの目的としている栽培の画一化、単一化というものです。その代表的なものはコーンと大豆です。
栽培されているコーンのほとんどは遺伝子組み換え(GM)で、除草剤耐性です。この除草剤は、モンサント社が作っています。農家は何度も何度も大量の除草剤をまくことになります。そしてモンサント社は、GMコーンの種を所有しています。
いまGM作物の特許を持っている会社は、モンサント社を含めて4つしかありません。そのうちモンサント社はいま市場の23%を占有しているといわれていますが、彼らの目的は、マクドナルド社のように、「一つの種を世界中に」です。
4社が80%占有
食肉業界でも同じことが起こっています。たった4社が市場の80%を占有しています。スミスフィールドやタイソンなどの食肉大企業は、生産している価格よりもずっと安い値段でGMコーンを買うことができます。これが可能になったのは、コーンに、政府から補助金が出るようになったからです。
この単一栽培のGMコーンによって、安い加工食品が作られるようになりました。アメリカから始まり、それが世界中に広がっています。いまアメリカでは、20年前に比べて、1日の摂取カロリーが300キロカロリー増えたといわれています。これは、がんや高血圧、糖尿病につながっています。アメリカ人の3分の2が、肥満もしくは太り気味といわれています。この病気を治療するのに年間2000億ドルかかるといわれ、新たな出費がかさむことになります。
声をあげ始めた
みなさんがGMに反対するのであれば、アメリカに住む者にとっても力強いことです。アメリカでも、安い食品が私たちの健康を害していることがわかり始めて、多くの人々が声をあげ始めています。また、消費者の力によって、合成成長ホルモンの入った牛乳の販売をストップさせました。マクドナルドは、ピンクスライム肉を使うのをやめ、ピンクスライム肉を製造していた4つの工場のうち3つが閉鎖に追い込まれました。
私たちは、100万人分の署名を集めて、政府に「GM食品の表示をしてほしい」という要請を出しました。消費者は、私たちが考えている以上に力をもっていると思います。
(新聞「農民」2012.6.18付)
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