TPPと郵政事業を考えるシンポ
郵政産業労組委員長 廣岡元穂さんが報告
郵貯や簡保の資産危ない
アメリカ金融市場の“自由化”ねらう
全労連公務部会と郵政産業労働組合・郵政事業研究会は6月2日、東京都内で「TPPと郵政事業を考えるシンポジウム」を開きました。
シンポジウムでは、全労連公務部会代表委員の宮垣忠さんが、「アメリカは、郵貯や簡保の資産をねらっていっそうの市場開放を求めている。TPPの本質を学ぼう」と主催者を代表してあいさつ。郵政産業労働組合委員長の廣岡元穂さんが「TPPと郵政事業」と題して報告しました。その一部を紹介します。
優位性を完全に撤廃
アメリカは、2001年から「年次改革要望書」を日本に突きつけ、郵政事業の「民営・分社化」、日本郵政に与えられてきた競争上の優位性を完全に撤廃し、対等な保険・銀行サービスの条件を求めています。いまの国会で、アメリカの要求とは相反する「郵政改革法案」が成立しましたが、アメリカから懸念が表明されると、政府はいち早く「当面、ガン保険など新商品への参入を見送る」というメッセージを発しました。
邪魔なゆうちょ銀行
アメリカの最大のねらいは、1491兆円にものぼる個人金融資産です。日本では、個人金融資産のうち、現金・預貯金が55%、株式などの有価証券は12%ですが、アメリカでは現金・預貯金が14%しかありません。アメリカのねらいは、金融市場の自由化で日本の個人金融資産をアメリカ型に変えることにあります。
またアメリカでは、小口の預金口座には利子をつけるどころか「口座維持手数料」をとるのが当たり前になっています。「お客様」は3億円以上の大口利用者です。アメリカにとって、「口座維持手数料」をとらないゆうちょ銀行は邪魔でしょうがないわけです。もし、ゆうちょ銀行が完全民営化されれば、国民へのサービス切り捨てにつながり、農山村の簡易郵便局は閉鎖に追い込まれるでしょう。
米圧力で韓国は断念
韓米FTAを締結した韓国では、郵便局保険の加入限度額を引き上げる法令を定めようとしたところ、駐韓米国商工会議所から「韓米FTAに違反する」といわれ、法令を断念しています。
いま、農林漁業の団体だけでなく広範な団体・個人、そして多くの国会議員も「TPPに参加するな、慎重にしてほしい」との声があがっています。大企業の身勝手を許さないルールある社会、持続可能な経済への転換を図るためにも、TPP参加を阻止する運動を強めていきましょう。
(新聞「農民」2012.6.18付)
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