日本のTPP反対運動
アメリカの運動励ます
(食健連総会での発言から)
全労連・布施恵輔国際局長
5月8日から16日までアメリカ・ダラスでTPP加盟9カ国による12回目の交渉が行われました。全労連の布施恵輔国際局長は、アメリカの市民団体の協力で、アメリカの市民団体の1人として、各国のTPP交渉官たちに働きかけるロビー活動を行いました。全国食健連総会(5月26日)での発言から、その一部を紹介します。
徹底して秘密に
ロビー活動というのは、まさしくTPP交渉の会場となっているホテルのロビーに一日中いて、自分たちのお目当ての国や分野の担当官に、「ちょっと会えないか」と連絡をとって、交渉の進展情報などを探ったり、こちらの主張を話したりする活動です。何人かの交渉官と話す機会があったのですが、どの交渉官もとにかく口が堅い。交渉内容については、絶対に言いませんでした。
それでも、大企業がスポンサーになっている豪華なレセプションで、アメリカのロン・カーク通商代表部のスピーチを聞いたり、交渉官との話で印象的だったことがあります。それは「自分たちがゴールデン・スタンダード、つまり自由貿易の揺るぎない“金の基準”をつくっているのだ。この内容が今後の貿易ルールのテンプレート、つまり見本になる」と言っていたことです。
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TPP9カ国交渉が行われているホテルに向けて抗議行動するアメリカの市民団体(アメリカ・ダラス=5月12日)、円内は布施さん |
さらに交渉官たちは、私が日本人だとわかると、「日本もTPPに入るんですよね」と、日本の加盟がさも既定事実かのように言い、「日本も私たちが今決めている基準を守ってください」と言うんです。日本がTPPに参加することになれば、こんなに徹底して秘密裏に進められている交渉結果を押しつけられるわけで、その恐ろしさを痛感しました。
ロビー活動をしているのは、ほとんどが大企業で、IBM、フォード、マイクロソフト、ウォルマート、フェデックスなど、名だたる大企業はみんないました。ちょうどこの会合の最中に、日中韓FTAの交渉開始が発表されたのですが、現地では発表の2日前にはこのニュースが知れ渡っていて(表向きは隠していますが)、日本のTPP参加は、彼らにとっても重大な関心事だということがわかりました。
国際連携強めて
一方で、日本のTPP反対の運動が、アメリカのTPP反対の運動を励ましていることもわかりました。また、国際的なTPP反対のネットワークがあって、日本からも参加するよう求められました。日本の運動は、世界的に見ても輝いています。今後、もっと国際的な連携を強めて、世界のTPP反対の運動や情報を日本で共有しなければならないと同時に、日本の運動の盛り上がりを世界に発信していかなければ、と強く思いました。
(新聞「農民」2012.6.18付)
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