「農民」記事データベース20120611-1024-05

私もTPPに反対です

JA長野厚生連・佐久総合病院医師
色平 哲郎さん


混合診療が解禁されると
農村医療は崩壊の危機に

画像 国民皆保険制度ができて51年になりますが、私たちは健康保険証1枚あれば、いつでもどこでもお医者さんに診てもらうことができます。しかし、アメリカのように国民の6人に1人が医療保険に加入できず、まともな医療を受けられない国もあります。日本の国民皆保険制度は、世界中の人があこがれる貴重で大事な宝物なのです。

 日本がTPPに参加すれば、アメリカ式の「もうける」パターンを押し込もうとする外圧がかかってきます。つまり、医療をする側が値段をつける「自由診療」と、現行のような診療報酬にもとづく「保険診療」をいっしょにした「混合診療」の全面解禁です。

 歯痛くなったら飛行機で帰国?!

 もしそうなると、医療機関はもうかる「自由診療」にシフトすることは明らかです。お金持ちは治療を受けられ貧乏人は受けられなくなり、医者は少しでも条件のよいところで開業しようと農村には来ません。コストがあわない救急医療や産科、小児科は閉鎖に追い込まれるでしょう。

 そのいい例が、韓米FTAを結んだ韓国です。仁川(インチョン)にアメリカ資本の大病院が建設されるなど、急速に医療・医薬品の自由化が進められています。アメリカで生活していた友人によると、「歯が痛くなると飛行機に乗って日本に帰って治療していた。飛行機代よりもアメリカの治療費のほうが高い」という、ウソのような話です。

 アメリカのようにならないためにはどうすればいいのか。ヒントは、私が勤務する佐久総合病院にあります。2代目の院長が“農村医学の父”と言われた若月俊一先生です。佐久総合病院の経営者は農民のみなさんで構成する協同組合です。農民が医者を雇っているわけです。

 国民皆保険の大事さ考えて

 若月先生はここで看護師や保健師さんたちと、塩分を減らすことなど寸劇を使ってわかりやすく保健医療の教育活動を行いました。つまり、予防医療をやって病気を減らしてきた、これが佐久総合病院の地域医療の歴史なんです。

 TPPの問題を機に、一人ひとりが国民皆保険の大事さを考えてほしいし、TPP参加はくれぐれも慎重であってほしいと願っています。

(連続講座「消費者からみたTPP問題」、4月22日の講演から)

(新聞「農民」2012.6.11付)
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2012年6月

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