「農民」記事データベース20120611-1024-02

全国食健連総会

TPP参加反対
広がった国民的共同

“食”を真ん中にさらに強めよう

関連/東穀取がついに解散へ

 全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は5月26、27の両日、東京・新宿の新宿農協会館で総会を開き、22都府県、19団体から77人が参加しました。


画像 食健連の坂口正明事務局長が、1年間の運動の報告と今後の方針を提案しました。坂口さんは、TPP交渉参加への動きが強められるなか、これまでにない幅広い団体との国民的な共同が広がっていることを強調。とくに「TPPを考える国民会議」や、広範なTPPに反対する市民団体と共同して、「STOP TPP! 1万人キャンドル集会」を成功させた経緯を報告しました。

 坂口さんは、「地域でも中央でもこうした共同をさらに広げ、目に見える宣伝をおおいに強化しよう。政策転換と同時に、“食”を真ん中に置いて生産者と消費者の連携を強め、安全・安心な国産食糧の生産・加工・流通・消費を広げる運動も重要だ。秋のグリーンウエーブ行動を成功させよう」と、呼びかけました。

 FTAと変わらず

 討論では、農民連の真嶋良孝副会長が、野田内閣がTPPに加えて日中韓FTA交渉を推し進めようとしていると発言。「日中韓FTAはTPPほど自由化の度合いが高くないからまだマシだ、という論調があるが、むしろその悪影響はTPP以上に巨大になるという指摘もある。日本の食糧と農業にとって、非常に危険であることに変わりはない」と述べました。

 全労連の布施恵輔国際局長が、アメリカ・ダラスで行われたTPP9カ国協議で、アメリカの市民団体の一人としてロビー活動に参加した様子を特別報告しました。布施さんは、徹底した情報隠ぺいが行われ、交渉の内容や進展がまったく秘密にされていることなどを紹介。「日本のTPP反対の運動の広がりが、アメリカのTPP反対の運動にも大きな励ましになっている。今後も世界中のこうした運動と情報を交換し、共同していこう」と提起しました。

 強い農業づくり?

 各地からの報告では、「51団体で『県民会議』を結成。3月にはすべての農協から組合長・役員などが参加して、韓国に韓米FTAの調査団を派遣した」(岩手)、「7月に開催する津軽食健連の総会で、地元医師会の副会長が講演してくれることになった。TPP反対の共同を、他の分野の団体にも広げていきたい」(青森)など、これまでの政治的立場や食糧・農業の枠をこえて、「TPP参加反対」の一点での共同を模索する取り組みが、多数報告されました。

 また、「農水省の『人・農地プラン』が地域で推し進められ、担い手育成と言いながら、何の話し合いももたれないまま、行政主導で進められている」(京都)など、TPP参加を見込んだ「強い農業づくり」に、警鐘を鳴らす報告も出されました。

 また、放射能汚染の被害と賠償のたたかいや、原発再稼働を許さないたたかい、再生可能エネルギーへの転換など多面的な活動が報告されました。


東穀取がついに解散へ

米先物取引・経営不振

農水省の責任極めて重大

 農水省から認可を受けて、米の先物取引の試験上場を行っていた東京穀物商品取引所(東穀取)は、取引の停滞から経営不振に陥り、「解散」を発表しました。米の先物取引は、同時に認可を受けた関西商品取引所(関西商取)に移管されます。認可から1年もたたずに解散する事態になり、農水省の責任がきびしく問われています。

 昨年8月8日から華々しく始まった米の先物取引は、当業者(農家や米業者)の参加が得られず、投機家にも見放され、取引は停滞を続けていました。一日5000枚(1枚6トン)の目標に対して、出来高は1割にも達していませんでした。

 もともと東穀取は深刻な経営状態にあり、東京工業品取引所と統合することになっていました。ところが米上場の認可を受けて統合話をご破算にした経過があります。先物取引の認可は東穀取の救済策でもあったわけです。

 不安定な需要と供給を放置して

 農水省は、関係者の強い反対にもかかわらず認可を強行した上に、米の先物取引の停滞が明確になった昨年12月から「シーズンレポート」というコーナーを設け、ホームページ上で先物取引の情報提供を始めていました。先物取引の存続に手を貸す政府・農水省の責任は二重、三重に重大です。

 大震災以来、需給が不安定になり米価が大きく変動する下で、先物取引関係者と農水省は「リスクヘッジに先物は必要」との立場をとっています。しかし、米穀関係者が今、切実に求めているのは「需給と価格の安定」のための対策であり、不安定な需給と価格を放置して「先物で対策を取らせる」など許されません。

 農水大臣は認可に際して「当業者の参加も増え一定の取引が見込めないとは言えない」として認可しました。しかし、認可を受けた二つの取引所の一方が解散し、もう一方も取引が停滞している今、認可の条件は大きく崩れました。試験上場の期間(2年間)を待たずに、農水省は直ちに認可を取り消すべきです。

(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)

(新聞「農民」2012.6.11付)
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2012年6月

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