「農民」記事データベース20120611-1024-01

被災地に新しい息吹

栄村(長野)に農民組合誕生

関連/大飯原発の再稼働に断固反対

 昨年3月11日の東日本大震災の翌日未明、震度6強の長野県北部地震が栄村を襲いました。今年5月23日、その栄村に農民組合が誕生しました。準備会事務局から「現在確認されている組合員数は25人(世帯)です」と報告されると、参加者の中にはニッコリとうなずく人、安どの表情を浮かべる新役員。村の世帯数900、農家戸数550の村で目標の20世帯を超える入会者となりました。
(長野県農民連 宮沢国夫)


復興はこれから
村に渦巻く要求

 震災で農民組合の大切さを痛感

画像 これまで栄村には農民連の支部はありましたが、準産直米の取り組みで団体加盟している組合員が主で、米の集荷時期にだけ活動していました。長野県北部地震で大きな被害を受けた栄村。個々の組合員はそれぞれの地域で復旧・復興に全力でがんばってきましたが、農家や村民の切実な声を取り上げ、村や県、国に要求していく取り組みができず、組織の必要性を痛感しました。

 結成準備段階で復興へ積極提案

 そこで「農民組合を作ろう」と、これまでの組合員と新聞「農民」読者のほかに、地域ごとに中心的な役割を担ってほしい人の名簿を作って訪問しました。なかには「おれは保守だが、あんたたちの仲間になれるのか」と言う人もいるなど、訪問したほとんどの人が準備会の世話人になってくれました。

 そして、準備会を2回、3回と重ねるうちに、被害を受けた家屋の修理にかかった費用負担のことや、いまだに作付けできない田んぼの改修の問題、国に復興基金があっても使い勝手が悪いなど、被災した農家の声が出され、国や県、村のそれぞれの段階で解決すべき問題が山積していることが話題になりました。「栄村の米をもっと積極的に売り込む方法を考えなければ」と、村の復興に向けた提案も出されました。

1人の問題をみんなで追求していこう

 農家と村民とが主人公となって

 5月23日の結成総会には、田植えの準備のために来られない人もいましたが21人が参加し、規約と新役員の提案を満場一致で可決。当面の行動として、これまで準備会で出された意見や要望を「農民組合に入っていっしょにやりませんか」というチラシを作って入会のお誘いをすることにしました。

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結成総会に集まった組合員のみなさん。前列左3人目から前村長の高橋彦芳さん、組合長の山本一郎さん、副組合長の石沢正さん、事務局長の広瀬進さん

 その中身は、TPPや税金の学習会、産直とともに、復興に被災者の声を反映させるための“つどい”を開くことや、米の普及のための第一歩として「誰もが使える食味計の設置」、柏崎・刈羽原発から50キロ圏内の栄村での対策と、当面「放射能測定器の購入」などを要求しています。こうした取り組みは、個々の農家のさまざまな要求やつぶやきを取り上げる運動であり、農家と村民が主人公となって草の根から復興を進める運動にもなります。また、新役員は「農民組合を結成して運動を進めることが、これまでの全国からいただいた支援の恩返しになる」と決意を込めて語っていました。

 「語る会」と農民組合歴史に学ぶ

 結成総会のあと、農民連の笹渡義夫事務局長を講師に「TPPから考える、村の農業と私たちの暮らし」をテーマに「語る会」をおこないました。主催は農民組合ですが、賛同団体には、村役場庁舎に「TPP参加断固反対」の垂れ幕を掲げる栄村、JA北信州みゆき北部支所、栄村農業委員会、栄村職員労働組合。来賓として齋藤家富副村長があいさつしました。

 この企画は、TPPの内容をつかむとともに、TPP参加は復興の妨げであり、村を復興するにはどうしたらよいのか、その道筋をみんなで学び語り合うことを目的にしたものです。

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雪解けとともに田畑の復旧作業が始まっています

 また、講演に先立って前村長の高橋彦芳さんが「栄村農民組合物語」と題したプリントを参加者に配り、お話ししました。実は、高橋さんは1962年2月に栄村農民組合を結成したとき事務局長をされていました。当時は、公民館の主事をしながらの活動だったようです。組合員43人で結成し、その後「栄村農民組合の作風は、1人の問題をみんなで追求すること」を柱に活動し、農業問題に限らず村民生活の幅広い問題が取り上げられた結果、組合員が105人になったことなどが、具体的に紹介されました。

 「1人の問題をみんなで追求する」というお話は、今後の私たちの運動におおいに示唆を与えてくれるものとなりました。


大飯原発の再稼働に断固反対

農民連が野田首相に要請文

 農民連は6月1日、白石淳一会長名で野田首相あてに「関西電力大飯原発3号機、4号機の再稼働に断固反対します」との要請文を送りました。

 要請文では、「福島第一原発の過酷事故はいまだ収束せず、事故原因は未解明で…、その不十分さや機能不全があきらかになった安全基準や原子力規制の枠組みは、事故前となんら変わっていません」「貴職が国民の不安を省みず、『政治決断』の意向を強く表明されたことに抗議し、再稼働断念を強く要請します」としています。

(新聞「農民」2012.6.11付)
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2012年6月

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