東京・築地市場移転
現局面は?
東中労 羽根川信委員長に聞く
東京都が江東区の中央卸売市場(築地市場)を同区豊洲の東京ガス跡地へ強引に移転しようとしています。現局面はどうなっているのか。全労連・全国一般東京地本・東京中央市場労働組合(東中労)の羽根川信委員長に聞きました。
不透水層から新たな汚染
反対世論さらに大きく
移転反対の公約投げ捨てた民主
――いま都議会で、移転問題はどうなっているのでしょうか。
今年の3月議会で、豊洲移転計画を進めるための予算が、都民の反対を押し切って賛成多数で成立しました。これは「移転反対」を公約に掲げていた民主党の裏切りによるもので、絶対に許すことはできません。
――予算が成立したということは、移転はもう決まったのでしょうか。
いまは、2014年度の開場をめざして、移転を前提とした既成事実づくりが行われているところです。
都は、豊洲新市場の主要幹線道路、環状2号線の建設工事に取りかかり、市場の南岸を流れる隅田川に橋を渡すための仮設桟橋工事を始めていますが、いま営業を続けている築地市場を貫通するものであり、問題です。
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東中労の羽根川委員長(左)と長谷川紘宇(こうう)副委員長 |
問題点や矛盾がますます広がる
――今まで指摘されてきた、移転に伴う問題点は解決されたのでしょうか。
まったく解決されていません。それどころか、計画が進むにつれて、問題点や矛盾がますます明らかになってきました。
まず、都は6月末に新市場実施設計を取りまとめるとしていますが、新市場の施設使用料について、いくらになるのかなどを明らかにしていません。都の方針では受益者負担をうたっており、大幅な値上げが予想されます。
また、汚染の問題では、昨年3月11日の大震災で、豊洲の移転予定地は液状化し、砂や水が噴き出しました。都の調査でも、地表から5〜9メートルの不透水層や盛り土から新たに汚染が見つかっており、汚染問題は深刻です。
しかし、汚染の事実や液状化に対して、何一つ対策がとられないまま、移転を強行しようとしていることが大問題です。
TPP参加を前提にした計画
――今後、どのように反対運動を進めていきますか。
以上のような問題点に加えて、移転の最大のねらいを明らかにしていくことが必要です。それは、規制緩和、構造改革の名の下に、市場を大手量販店のための金もうけの場に変えようとするものです。日本の食品流通の構造を変え、輸入食品の流通をよりスムーズにしようというのです。まさに、TPPへの参加を前提にした移転計画と言わざるをえません。
政府は、日本共産党の笠井亮衆院議員の質問主意書への答弁書で「東京都に対し、食の安全性や信頼が確保されるよう科学的見地に基づき万全の対策を講じるとともに、消費者に対して十分な説明を行い、その理解を得るよう求めている」と述べています。「都民合意」の立場で計画を考えるよう指導すべきです。
東中労は、農水省や環境省などとの交渉を通じて、問題点を明らかにし、都民の反対世論をさらに大きくしていきます。市場内の6団体にも呼びかけて、運動を巻き返したい。これからが正念場です。力を合わせて移転を阻止しましょう。
(新聞「農民」2012.6.4付)
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