日米首脳会談
アメリカいいなり、TPP推進明確に
―断念するまでさらにたたかい抜く
2012年5月3日 農民連会長 白石 淳一
一、野田首相とオバマ大統領は、日本時間の5月1日、アメリカ・ワシントンで日米首脳会談をおこない、「未来に向けた共通のビジョン」と題する共同声明を発表した。
日米首脳会談では、沖縄県民と国民の悲願である米軍基地の撤去や負担軽減についてなんら話し合わず、日米軍事同盟を地球規模に拡大することを確認するとともに、米軍と自衛隊の「動的防衛協力」に踏み出すことで合意した。日米の「動的防衛協力」とは、米軍と自衛隊が海外で「肩を並べて武力行使する」ものであり、海外での武力行使を禁じた日本国憲法を踏みにじって「集団的自衛権行使」に踏み出そうというものである。これは日米軍事同盟をさらに危険で侵略的なものに変質させることであり重大である。
原発推進についても「日米協力」を打ち出すなど、アメリカの「お墨付き」で原発の再稼働や「原子力エネルギー利用」の推進をはかるという立場を鮮明にした。
一、日米首脳会談で焦点となったTPPについて、野田首相は参加表明をおこなわなかった。これは、「TPPを訪米の手土産にするな」という国民世論の結果であり、運動の成果である。
しかし「共同声明」では、APEC(アジア太平洋経済協力会議)のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)という長期目標に沿って、アジア太平洋地域の貿易・投資に関する高い水準のルールを築くことや、TPPに関する2国間協議を前進させること、2国間の経済調和と地域経済統合の推進を探求するとした。
また、日米首脳会談でオバマ大統領は、日本のTPP参加の前提条件として、保険、牛肉、自動車の3分野での規制緩和と「市場開放」への日本政府の取り組みを迫った。このように、日米首脳会談はTPPに突き進むことをいっそう明確にするとともに、TPP交渉の「入り口」から「アメリカ型ルール」の押し付けを迫るアメリカと、それに屈服する日本政府の姿勢を鮮明にした。
一、日米首脳会談は、対米追随ぶりを異常なまでに際立たせるものとなった。こうした異常なまでの「アメリカいいなり政治」は、根本からただされなければならない。農民連は、TPPをはじめとしたアメリカの不当な圧力や、アメリカに屈服する民主党野田政権をきびしく批判してたたかう。その根源となっている日米安保条約の廃棄を求める国民的世論をひろげるために奮闘する。
同時に、今回の日米首脳会談をめぐって、アメリカいいなり政治を突き進む野田政権と、TPP交渉の参加に反対する圧倒的世論との深刻な矛盾が浮き彫りになった。TPP交渉参加をくい止めることは、アメリカいいなり政治を変える要のたたかいである。「原発ゼロ」の日本の実現、消費税増税反対、普天間基地の無条件撤去、憲法改悪反対などの運動と結んで、TPP交渉参加反対の一致点での共同を全国津々浦々で巻き起こし、政府が交渉参加を断念するまでたたかい抜く決意である。
(新聞「農民」2012.5.21付)
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