農業つづけ生き抜くぞ
被災地はいま、どうなっている東松島市の矢本農民組合の会員は31人。このうち立沼地区をはじめ11人の会員が、とくに大きな津波被害を受けました。立沼地区は、宮城県内でもいち早く、昨年5月に高台への集団移転を全員一致で決定しています。住宅地については、農地からそう遠くない、市内の高台に移転先が決まり、「少しずつだが、なんとか集団での高台移転に展望が開けてきた」と、矢本農民組合の武田久夫さんは言います。被災した元の宅地もけっして十分とはいえないまでも、納得のいく価格での買い上げが決まりました。しかし、移転先の宅地面積が一軒あたり80〜100坪と、農家としては手狭だということ、菜園などの宅地内の農地の扱いが未定なことなど、懸念材料は尽きませんが、最大の問題は、移転終了までに今後4年半もかかることです。 矢本農民組合の組合長、三浦勝志さんが「みんなで力を合わせて、なんとしても復興させたい」と語る農業復興でも、時間が問題となっています。被災した田畑は、復興交付金を使って除塩を行い、大区画に基盤整備しなおす計画ですが、完成まであと4年もかかります。三浦さんは、「その間は他産業で働かざるを得ず、完成してももう農業に戻れなくなってしまうのではないか、農地の貸し手はいても、借り手がいなくなってしまうのではないか、というのが、いま一番の悩みです」と言います。 立沼地区では、ハウスなどの農業施設や農業機械も全壊していますが、この課題でも地域一丸となった懸命の模索が続いています。法人化してトラクターなどへの助成金をかちとったり、ネギの多角経営を立案し、調整・加工施設の整備が県の復興3カ年計画として予算措置が認められるなど、少しずつですが、大小さまざまな復興計画が進んでいます。 しかし、津波の被害を受けたうえに、40〜60センチメートルも地盤沈下した田畑の復旧では、不安が尽きません。除塩には水をかけ流すことが必要ですが、用排水網が損壊しており、修復が必要です。また国の計画では、客土(※)しないで基盤整備することになっていますが、水稲では秋の登熟期などに乾田すると塩害が出るのではないかといったことが心配されています。ハウス野菜でも地下水をくみ上げて灌水(かんすい)すると、やはり塩害が出ている事例がすでに報告されおり、「作目や栽培方法が限定されるのでは」と、武田さんは懸念しています。
メガソーラーを復興の一助にこうした農業復興の一助として、立沼地区で注目されているのが、メガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電です。武田さんは、「福島の原発事故は、私たちに自然エネルギーに転換する大切さを改めて教えてくれました。この地域は全国的に見ても日照量が多く、太陽光発電に向いています。どうしても除塩しきれないところにはメガソーラーを建設し、地域の農業再生に役立てたい」と期待を語ります。立沼地区の農家組合は1月に総会を開き、全会一致でメガソーラーへの挑戦を決めました。東松島市の担当者との話し合いを始めたばかりで、具体的にはまだ模索中ですが、「農業をやめてメガソーラーでもうけるのではなく、あくまでもの作りを続けるため」(三浦さん)の、新たな試みが始められようとしています。
※山など他の場所から土を搬入すること。 住宅移転・農業復興
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色鮮やかな手作りたこを持つ庄内農民連の皆さんと鈴木さん(右端) |
[2012年4月]
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