私もTPPに反対です
日本食品関連産業労働組合総連合(フード連合)会長
江森 孝至さん
食の安全を脅かすTPPを
国民に広く浸透させてこそ
フード連合は、「連合」(日本労働組合総連合会)に加盟し、食品製造業を中心とした産業別労働組合で組合員は10万4000人です。300単組中8割は300人未満の中小企業の労組です。その多くが地場・地域密着型の食品製造業で、地域で採れた農畜産物を加工してスーパーなどに提供しています。
日本農業が崩れ食品産業に影響
「連合」は、TPPの中身をあまり議論しないまま、「賛成」の立場を決めてしまいました。
フード連合は、経済連携協定に反対しているわけではありません。どういう経済連携をやるのが日本の国益にかなうのか、あるいは食品産業にどういう悪影響を及ぼすのかを考えたときに、「これはTPPではないのではないか」という結論に至り、「反対」のスタンスを明確にしたわけです。
たとえば砂糖は、鹿児島や沖縄の、特に離島の主要な産品の一つになっています。それが壊滅的な打撃を受ければ、離島に人が住めなくなる状況も生まれかねません。
また、乳業関連では、北海道を中心に地場の牛乳を使ってチーズや脱脂粉乳などの製品を作っていますが、大量に輸入されれば、農業も食品製造業もともに大打撃を受けます。日本農業が崩れ去ることは、食品産業も影響を受け、地域の雇用や経済も打撃を受けます。
小泉構造改革で何を学ぶべきか
小泉構造改革から何を学ぶべきか。結局、郵政の民営化も、労働者派遣法の改悪も、大店法も、アメリカが日本にアメリカン・スタンダード、つまり規制緩和を押しつけたものです。
その結果が、郵政が民営化されて、非正規労働者が急速に増え、商店街は、シャッター通りになっていきました。TPPでこれと同じことが起こるのではと心配しています。
「新自由主義にストップをかけてくれ」というのが政権交代に託した国民の意思だったはずですが、TPP参加で新自由主義と同じことをやったら、なんのために政権交代だったのかということになります。
日本の食品企業にとって、TPPで原材料が安くなればいいのではないか、という声がありますが、かつて小麦が高くなったとき、流通側から「値上げができない」といわれて価格の転嫁はできませんでした。流通との力関係は非常に大きく、流通の理解を得られなければ、価格の転嫁は厳しいのです。
アメリカの主張ますます強まる
また、TPP参加によって、BSE対策や遺伝子組み換え食品の表示、ポストハーベストや残留農薬など、食の安全を脅かす主張がアメリカからでてくると思います。
しかし、日本の食品の強みは、安全基準がしっかりしていることです。食の安全に問題があるということをもっと発信していくことが、TPP参加反対を多くの国民に浸透させていくうえで重要ではないかと思います。
(3月27日、第3回「消費者からみたTPP問題連続講座」での報告から)
(新聞「農民」2012.4.23付)
|