牛丼チェーン・大手スーパーで
輸入米が拡大中
“安全”と安さが“売り”だなんて…
TPP参加の“地ならし”
見過ごせない!
国民の誰もが安全性に不安を抱く輸入米。今までは国民の目に触れることなく消費されてきました。しかし、原発事故による放射能汚染で国産米への影響が広がるなか、「安全」と価格の安さを売り物に外国産米が注目され、牛丼店や大手スーパーなどで取り扱いが広がっています。
さらに、輸入米の安売りに連動して国産米が値下がりする動きも出ています。これは、ミニマムアクセス米の輸入を受け入れた際に、「国産米の需給に影響を与えない」とした閣議了解(1993年12月17日)に反するものです。そして何よりも、いま大問題になっているTPP参加に向けた“地ならし”であり、見過ごすことのできない問題となっています。
もうけ最優先の「松屋」「西友」 牛丼店「松屋」を全国展開する松屋フーズは、2月からオーストラリア米と国産米をブレンドした米の使用に踏み切りました。そして、牛丼を280円から240円に値下げしました。
また大手スーパーの西友は、3月から中国(吉林省)産米をいっせいに販売開始しました。売り場には、国産米より30%も安い5キロ1299円と1・5キロ449円の米袋が、うずたかく積み上げられています。
西友は、TPP推進の急先鋒であるアメリカの大企業、ウォルマートに買収された企業です。こともあろうに輸入米の「安全」 を売り物に、 「もうけのためなら手段を選ばない」――こうしたウォルマートの戦略を放置すれば、国産米の崩壊が現実になりかねません。
また、原発事故とその後の政府の無責任な対応によって、福島県産だけでなく隣接の米まで安全にもかかわらず敬遠されているなかで、被災地や風評被害で苦しむ農家の足を引っ張るものであり、断じて許せません。
枠いっぱい輸入された主食用米
政府が輸入するミニマムアクセス米(77万トン)のうち、SBS(売買同時入札方式)で主に主食用向けに10万トンの枠で輸入されています。米トレサビリティ法の施行(2011年7月)で、米を原料とする加工品や外食のごはんなどに原産国の表示や情報伝達が義務づけられ、業者はいっせいに外国産米から手を引き、2010年度のSBSの輸入量はわずか1万トンのみでした。ところが2011年度は業者が競って買い求め、枠いっぱいの10万トン全量の輸入が決まっています。
大手業者は、外国産米の買い入れについて、大震災以後の国産米値上げを理由にあげていますが、事実は一昨年秋に大暴落した米価がそれ以前に回復した程度にすぎません。
また、業者の思惑とはうらはらに、70%以上の消費者は外国産米に否定的な反応(日経新聞3月26日付)を示しています。
米トレサビリティ法をいかして原産地をきびしくチェックし、国産米を選ぶ国民的な運動を広げることが求められています。
中国産はどんな米?
西友は、米袋に「約580項目の残留農薬検査に合格した安全なお米」と表示。しかし食味には大いに問題あり。試食すると、「炊きあがりのにおいがふつうでない」「一晩たつと黄ばむ」などの声が聞かれ、業界紙も「劣化が激しい米」と紹介しています。
米業者の食味計(サタケ)のスコアは「55」で、「80」以上が良食味とされることからも“相当の代物”といえます。
SBS(売買同時入札方式)とは
SBSの入札は、輸入業者と国内の米業者が組を作り、政府を間に入れて輸入価格と業者への売り渡し価格の差額(マークアップ)の大きい順に落札する仕組みです。マークアップは292円(1キロあたり)まで徴収可能ですが、直近の入札では70円程度にとどまっています。
(新聞「農民」2012.4.16付)
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