「農民」記事データベース20120409-1016-05

TPPのモデル 韓米FTA
発効直後の韓国視察
(下)

岩手・県民会議の視察団に参加して
県農民連事務局長 岡田現三


TPPは韓米FTA以上に害悪

 市民団体や生協が、韓米FTA反対の運動に大きな役割を果たしてきています。

 調査研究強め中身を明らかに

 市民運動組織「参与連帯」は53人のスタッフを持ち、社会的な問題について情報収集と分析・広報・代案の提起をおこなっています。「参与連帯」の平和軍縮センターコーディネーター、パク・ジョンウンさんは「大手マスコミは『FTAを進めないのは売国奴だ』と吹聴しています。韓中FTAについても論議がされていますが、内容が明らかになっていません。しかし目的は明らかなので、調査・研究が必要です」と語ります。

 民主社会のための弁護士会に所属する弁護士のソン・キホさんは、「外資の大店舗進出を許可する法律が1988年にできましたが、ある程度は規制する条件が付いています。韓米FTAのもとでは、これを緩和させるよう提訴する動きがあるでしょう。私たちは逆に、規制条件を強化する運動をしてFTAの問題点を広く明らかにさせます。そのために中小商工業者が大きな運動をおこしています」と、FTAの条文や付属書の具体的な事項をあげながら解説してくれました。

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全国農民会総聯盟(KPL)のカク・キルジャさん(中央)から話を聞く調査団のみなさん

 牛肉の輸入条件緩和に反対して

 また消費者活動連合会(iCOOP)は、アメリカ産牛肉の輸入条件緩和に反対し、各地のデモやアピール活動に積極的に参加しています。

 農業はもちろん、製薬・自動車・商店街・地域文化まで大きな影響を及ぼす韓米FTA。韓国農漁村社会研究所副理事長のクウォン・ユングンさんは「投資家が国家を提訴できるISD条項、そして現状の自由化よりも後戻りすることを許さないラチェット規定がある限り、これらのことは現実にどんどん進められる」と強調しています。

 岩手県農業協同組合中央会の高橋専太郎副会長は「お米が除外されているという韓米FTAに比べると、TPPはより深刻なものになると感じました。地域農業は、食糧はもちろん、多面的機能も含めて国民の暮らしを支えています。日本の食卓を遺伝子組み換え食品やポストハーベストまみれの農産物にあけわたすわけにはいきません。経済優先のグローバリゼーションか、地域社会を守るのか、国のあり方がとわれています」と視察を振り返りました。

 “交渉やめよ”の世論さらに広め

 韓米FTA阻止汎国民運動本部のジュ・ジェジュンさんは、私たち代表団に向けて強く訴えました。「私たちは6年間、反対運動をおこなってきました。3月15日で負けたとはいえ、次の段階に運動を進めなければなりません。TPPは韓米FTA以上の害悪をもたらすものだと考えています。日本のみなさんの運動の発展を祈ります」。

 韓国のみなさんから熱いエールをいただき、それに応えるためにも「野田首相はTPP交渉に参加するな!」の世論をさらに広げていきたいと思います。

(おわり)

(新聞「農民」2012.4.9付)
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2012年4月

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