「農民」記事データベース20120402-1015-06

私もTPPに反対です

日本消費者連盟共同代表 山浦康明さん


食品表示も非関税障壁に
食の安全を脅かすTPP

画像 TPPの中で、食の安全に関する問題では、アメリカが日本にハーモナイゼーション(調和主義)を強要してくる恐れがあり、消費者・市民にとって大問題です。

 食品添加物が緩和される恐れ

 食品添加物の承認の問題では、かつて日本では、添加物を使いたい企業が申請して、食品安全委員会が判断していましたが、いまでは、国際的に使われている添加物は、食品安全委員会にかけることになっています。しかし、アメリカは、それでも承認のスピードが遅いというのです。

 日本で使用できる食品添加物は現在、約800種類ですが、アメリカでは3000種類といわれています。そのなかには、発がん性があることがわかり、日本で使用が禁止になったものもあります。アメリカは「同じ商品なのに、国によって適用される基準が違うと企業に負担がかかる」という理由で、日本の食品添加物の使用基準を緩和するよう要求してくることが予想されます。

 BSE牛肉の無条件輸入も

 そして、BSE牛肉の無条件輸入の承認の問題です。この間、アメリカは、「日本はもっと門戸を開放しろ」と言ってきました。「アメリカは管理されたリスク国で、自由に貿易できるようになった。かつてBSEが発生したが、これはもう抑えている。ちゃんと管理しているアメリカから牛肉を輸入する日本が勝手なルールを作って制限するのはおかしい」と言っています。OIE(国際獣疫事務局)という機関で、アメリカは「管理されたリスク国」と位置づけられており、アメリカがOIEの基準を盾に無条件輸入を要求してくることになります。

 それから残留農薬基準の緩和、なかでも、輸送中の防虫・防腐のために、収穫後に農薬をかけるポストハーベスト農薬の使用拡大という問題もでてきます。

 以前、アメリカ産の冷凍フライドポテトに大腸菌が発見されて、アメリカに送り返したことがありました。このとき、アメリカは「日本は基準が厳しすぎる。フライドポテトは調理して、熱を加えているのだから、菌が死滅して安全だ」と猛烈に抗議しました。TPPでも、大腸菌の基準値が議論の対象になっても不思議ではありません。

 食品表示制度も国際ルール優先

 食品表示はTPPでどうなるのか。食品表示制度はTBT(貿易の技術的障害)の問題ということになります。食品表示制度により、輸出国が輸出しにくくなるということがあれば、これは技術的な障害になるから問題だという意味です。

 日本では、偽装表示や食中毒の問題があってから、消費者目線にたって食品行政を見直し、食品表示ルールを厳しく統一化しようという議論が始まっています。そのなかで、アメリカや韓国でうたわれている「消費者の権利」を行使できるようにしようと消費者団体などは提案しています。

 WTO(世界貿易機関)協定の中のSPS(衛生植物検疫)協定は、植物検疫の基準を作るものですが、ここではコーデックス委員会という国際機関が作ったルールが優先することになります。

 各国で基準を作っていいのですが、貿易紛争になった場合には、その基準が正しいことを証明しなければならないという決まりになっています。

 コーデックス委員会のなかでは、原料原産地表示がまだ議論されていないので、「国際ルールはこうですよ」と勝手に決められて、日本の原料原産地表示の拡大が非関税障壁として訴えられてしまうおそれがあります。

 TPPによって、日本で厳しい食品表示を求める声が押しつぶされてしまうことになります。

(2月23日、第2回「消費者からみたTPP問題連続講座」での報告から)

(新聞「農民」2012.4.2付)
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2012年4月

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