愛知県内のムダな
公共事業を告発
公害地球懇シンポ
生物多様性守る取り組み報告
公害・地球環境問題懇談会(公害地球懇)は3月3日、シンポジウム「大型公共事業と生物多様性について」を開き、愛知県内各地の無駄な公共事業の実態と生物多様性を守る取り組みが報告されました。
公害地球懇の橋本良仁さんは、八ツ場(やんば)ダム(群馬)、川辺川ダム(熊本)、有明海潮受け堤防(長崎)、高尾山トンネル(東京)など、日本を代表する自然破壊の公共事業を批判し、そこで生まれた反対運動を紹介。「自然を壊すことは人間の心を壊すこと。人の心を壊したのでは新しい社会を作れない」と訴えました。
埋め立て見直しを
名城大学大学院の鈴木輝明特任教授は、日本一のアサリ生産を誇る三河湾の環境と、今後の海域管理の課題を報告。生物多様性豊かな三河湾では、小型底引き網漁、採貝漁業、ノリの養殖などが盛んで、アサリ、アナゴ類、トラフグなどの生産量では、愛知県が全国1位を占めています。1970年代に入ってから、三河湾東部海域の埋め立て面積の増加に伴い、赤潮・貧酸素化が進行し、ナマコ、エビ、シャコ、カレイなどの漁獲量が減少しました。
鈴木さんは、海域の生態系を修復するために、干潟・浅場域を、生物が豊かに繁栄できるよう造成し、水質改善を図る必要性を強調しました。
六条潟と三河湾を守る会の市野和夫さんは、1995年の三河港第5次港湾計画に盛り込まれた、豊川河口に広がる六条潟の全面埋め立て事業について報告。その後、ラムサール条約登録湿地潜在候補地への選定、港湾計画の保全ゾーン指定により、2011年の第6次計画で、埋め立てを縮小する方向で見直しがなされました。
市野さんは「地元住民、漁業者らが協力して、六条潟保全のための取り組みを進める必要がある。上流部の森林・農地の管理や河川の治水なども重要な課題だ」と述べました。
設楽ダムできると
設楽ダムの建設中止を求める会の倉橋英樹さんは、断水の必要がなく、小さな流域面積で治水効果が望めないダム事業の問題点を暴露。ダムサイトは岩盤が緩み、貯水池も地滑り・崩壊の危険性がある点を指摘しました。
設楽ダム住民訴訟弁護団の樽井直樹さんは、ダムの環境アセスメントの問題点を列挙。ダム建設による水質悪化と川床の環境への悪影響という視点は検討されず、クマタカの保全による生態系への影響という視点も盛り込まれていない環境アセスを批判しました。
さらに「事業の実施を前提にしたものであり、『開発しない』という選択肢を含めた再検討が求められる」と語りました。
会場の参加者からは「設楽ダムができると、天然遡上するアユはどうなってしまうのか」「どうすれば環境アセスに市民の声が反映されるようになるのか」などの疑問や意見が出され、活発に議論しました。
4日は、設楽ダム建設予定地を視察後、ワークショップ「ダムいらない!私の地域おこし」で交流しました。
(新聞「農民」2012.4.2付)
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