「農民」記事データベース20120402-1015-01

TPPのモデル 韓米FTA
発効直後の韓国視察
(上)

岩手・県民会議の視察団に参加して
県農民連事務局長 岡田現三

関連/消費税大増税ストップ4・12国民集会

 3月18日から21日まで、「岩手県・韓米FTA状況調査団」が韓国を訪問しました。この調査団は、岩手県内の51団体で構成する「TPP等と食料・農林水産業・地域経済を考える県民会議」が派遣したもので、県生協連合会の加藤善正会長や県農協中央会の高橋専太郎副会長を筆頭に、県内8農協すべてから組合長・役員などが参加したほか、いわて生協、医療生協、労働組合、革新懇の代表など、総勢23人が参加。農民連からは岩手県連の岡田現三事務局長が参加しました。岡田さんのリポートです。


社会そのもの変える運動だった

 政党の枠超えた市民レベルで…

 「韓米FTA反対の運動は、単に個別の組織や団体の取り組みではなく、政党の枠を超えた市民レベルの社会を変えよう、社会そのものを作り変えていこうという運動だった」―県生協連合会の加藤善正会長は視察を終えて、こう述べました。

 訪韓は、韓米FTAが3月15日に発効された直後となりました。TPPは韓米FTAがモデルとなると言われているだけに、韓米FTAの内容と発効までの経緯、そして世論と反対運動の流れについて集中的に聞き取りすることができました。

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韓国の市民団体、「参与連帯」と岩手の調査団。左端が生協連の加藤さん

 訪問先は、研究者や生協、市民団体、農民組織、農協です。デモ行進などの大きな運動の現場に出会うことはありませんでしたが、いずれの訪問先でも韓米FTAに向けた運動を聞くことができました。特に大きな運動は、アメリカ産牛肉輸入の条件緩和に対する反対運動だったと言います。この取り組みは、戦略上も特に重視されました。

 押しつけられた「4大先決条件」

 2006年に韓米FTAの交渉が開始されて以来、アメリカはFTAと並行して「4大先決条件」を押し付けてきました。それは、(1)BSEで停止したアメリカ産牛肉の輸入条件緩和、(2)スクリーンクォーター制(自国で制作された映画の上映を一定の割合で映画館に義務づける)の縮小、(3)薬の値段の現状維持(ジェネリック医薬品に対する制限をおこない、アメリカの製薬企業のメリットをはかる)、(4)自動車の排ガス規制の適用猶予、というものです。

 韓米FTA阻止汎(はん)国民運動本部の政策委員、チュ・ジェジュンさんは、「4大先決条件への反対が大きなたたかいでした。TPPでも同じようにアメリカからさまざまな要求が日本に出されていると聞いています。これを食い止められるかどうかに運動の成否がかかっています」と強調しました。

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ソウル市内の生協の店舗を視察し、地産地消の取り組みなどを聞く

 生産者からは意外な反応が

 ところが、現場の生産者からは意外な反応が返ってきました。ソウルから南西へ約40キロにある華城市ピボン農協。大規模なカントリーエレベーターの導入や大型育苗ハウスへの支援をおこない、良質米の生産に力を入れています。自動散水・温度管理された育苗ハウスの中で、若手の稲作農家に聞いたところ「お米はFTAから除外されているので、それほど心配はしていません。畜産農家はたいへんだと思うが…」とのこと。ピボン農協の組合長も「親環境・有機農業もやり、高価に販売していきたい」と語ります。韓国農業協同組合中央会の担当者も、「チリとのFTAを締結して10年たつが、そのときのデモが大きな行動の最後だった。実際は韓チリFTAで大きな農業被害は出ていない」とコメントしていました。

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華城市ピボン農協のカントリーエレベーター前で農業の現状と課題などを聞く

 韓国と日本と連帯を強化して

 一方で、農民連とも交流のあるビア・カンペシーナ加盟の全国農民会総聯盟のカク・キルジャ政策局長は「3月15日は韓米FTA廃棄闘争の開始日です。TRQ(低関税の割り当て制)さえも守られないのではないかという懸念が広がっています」と語ります。FTAの内容が今後どうされようとしているかも焦点です。また韓国女性農民会のキム・ジョンヘさんも、断食・断髪など激しい運動を展開してきたことを紹介し、「韓米FTAが続くとは思いません。家族農業を中心とした食のシステムを守るために、韓国も日本との連帯を強めていきたい」と強調しました。
(つづく)


この時期に増税なんてとんでもない
これ以上の生活破壊は許せない
消費税大増税ストップ4・12国民集会
▼日時 4月12日(木)12時〜午後1時30分
▼場所 東京・日比谷野外音楽堂
▼集会後、パレード・国会議員要請

(新聞「農民」2012.4.2付)
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2012年4月

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