韓米FTA
TPPの本質も同じ
連帯してたたかおう
韓国全国農民会総聯盟 イ・チャンハンさん
関連/韓米FTAの毒素条項
北海道岩見沢市で2月25日、「空知TPPシンポジウム」が開かれ、韓国全国農民会総聯盟のイ・チャンハン政策委員長が、「韓米FTAの問題点と阻止に向けたたたかい」を報告しました。その一部を紹介します。
韓国の主権奪い農業放棄させる
いま韓国では、アメリカとのFTA発効に対して、農民や市民による大きなたたかいが巻き起こっている。韓米FTAの交渉は2006年から始まったが、なぜ、多くの農民や市民がたたかってきたのか。最も大きな理由は、韓米FTAによって韓国の主権が奪われ、国民の生活に悪影響を及ぼすからだ。FTAの本質は、国の規制を最小限に抑えて、企業の利益を最大にしようとするところにある。これは、国民の生活を守るという国の任務、義務を脅かすものだ。
農業について言えば、韓米FTAは農業そのものをあきらめさせ、放棄させるもの。専門家の調査によると、現在の農業人口は全体の7%だが、これが2%になってしまう。韓米FTAでは、1531品目のうち40%の品目が即時関税撤廃で、例外は米に関する16品目のみ。アメリカ以外のFTAでは最低でも20%の品目が例外扱いだった。
「韓国は農業をあきらめてしまったのか」と思われてもしょうがない。だから、農民は一番前でたたかってきた。農民はお金持ちになろうといっているのではない。「農業は自分の人生であり、生活なんだ。壊さないでくれ」と言っているだけだ。
アメリカやヨーロッパの国々は、私たちに「農産物を自由化しろ」と要求しながら、自給率は100%以上だ。穀物価格が高騰すれば、輸出していた国は自給のために輸出を規制している。しかし韓国政府は、「競争力がないのが韓国の農業なんだから、競争力を高めるためにも開放が必要だ。安い農産物が入ってくれば物価も下がる」「GDP(国内総生産)があがって経済成長すれば雇用も増える」など、とんでもないことを言っている。しかし、社会的に増えた富で誰が豊かになるのか。1%の企業が富を占めて99%の国民は貧困にさらされるのではないか。
強行した与党に選挙で審判を
たたかいのなかで、国民も農業のことを心配するようになり、たたかいに参加してきている。韓米FTAが発効すれば、長期的なたたかいになる。4月11日に総選挙があり、12月13日には大統領選挙がある。これまで韓米FTAを強行採決したり誤ったことをやってきた与党に審判を下し、野党が圧勝するだろう。政権交代によって韓米FTAを廃棄させることができる。韓米FTAには「終了」条項があって、どちらかの政府が一方的に「終了宣言」を行えば廃棄できることになっている。いま大事なことは、韓米FTAの問題点を国民に知ってもらい、「終了」させるしかないんだという世論を高めていくことだ。なにが問題かというと、「毒素条項」が入っていること。この内容を知ったらみなさんも頭にきて怒るだろう。
韓米FTAもTPPも本質は同じであり、韓国の国民が心配していることと日本のみなさんが心配していることは同じだ。同じ問題を共有しているからこそ、私たちは連帯してたたかっていける。
韓国の国内法よりFTAが優先
アメリカの法律では国内法が韓米FTAに優先するが、韓国では国際条約が国内法に優先するため、韓米FTAに反する国内法や条例は「改正」させられる。
ISD条項
韓国に投資したアメリカの企業や投資家が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資仲裁センターに提訴し、損害賠償金を求めることができる。北米自由貿易協定(NAFTA)での紛争件数は46件、うちアメリカ政府が訴えられたのは15件だが、敗訴なし。
ラチェット条項
いったん条約で決めたことは、何があっても元に戻せない。たとえば、アメリカでBSEが発生しても牛肉の輸入を中断できない。電気・ガス・水道の公共サービスが民営化されて、社会的に何か問題が起こっても、元の公共サービスには戻せない。
将来の最恵国待遇
今後、韓国がほかの国とFTAを締結した場合、その条件が韓米FTAよりも自由化が進んだ条項がある場合、自動的にアメリカにも適用になる。
ネガティブリスト方式
サービス市場を全面的に開放し、例外的に禁止する品目だけを明記する。新商品を開発しても、リストに入っていないため例外扱いできない。
非違反提訴
アメリカ企業が期待した利益を得られない場合、FTA違反がなくても、アメリカ政府が企業に代わって韓国を提訴できる。
(新聞「農民」2012.3.26付)
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