手記 私の3・11
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喜ぶ原木シイタケ農家
茨城県かすみがうら市 円城寺さん一家
待ちに待った原木が届いた
“これで今年も植菌できる”
「待ちに待った原木が届いた。これで今年も植菌できる」――。東日本大震災1年を翌日に控えた3月10日、茨城県かすみがうら市の原木シイタケ農家、円城寺美恵(よしえ)さん(70)宅に、3000本の原木が届きました。「震災後も自慢のシイタケを消費者に届けたい」と願う円城寺さん一家は、新たなスタートを切りました。
島根県出雲市の業者が供給
ふるさとネット・日販連が橋渡し
トラック2台分
シイタケ原木を円城寺さんに供給したのは、島根県出雲市に本社がある素材生産業者、有限会社須佐チップ工業(藤原克一社長)。奈良県農民連の竹島茂直事務局長の紹介で、農民連ふるさとネットワークと日本販売農業協同組合連合会が円城寺さんとの橋渡しをしました。
原木は広島県三次市の材木置き場に保管されていたものを、運送会社、藤原産業(三次市)がトラック2台で2日間かけて1000キロの距離を運んできました。
到着した10日の朝は、あいにくの冷たい雨。しかし、原木が届けられた喜びをかみしめながら、1時間余りでトラックの荷台からの積み下ろしが完了しました。常陸野産直センター(石岡市)の飯田忠夫代表理事も駆けつけ、積み下ろし作業に汗を流しました。
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原木を積み下ろす円城寺卓生さん(左) |
めどついて安ど
円城寺さん宅の敷地内に積み上がった原木を前に、長男で経営の柱になっている卓生(たかお)さん(36)は、「みなさんのご厚意で今年は何とか1万本植菌できるめどがつきました」と安どの表情を浮かべます。東電への損害賠償請求行動で何度も上京するなど、経営維持に奔走してきた卓生さんにとって、喜びはひとしおです。
一方で、汚染原木の処理、自らの判断で出荷を断念したシイタケの減収分の埋め合わせなど、課題も残されています。
「キノコは木から出てくるのが自然な姿。植菌を経て原木から小さなキノコが芽吹きはじめたときの喜びは言葉に言い尽くせない。これからも原木にこだわります」。こう話す母の美恵さんは「原木が届いたのはよかったが、汚染はまだ収まっていないし、来年以降、原木の需要が各地で増え、産地も限られていることから確保はもっと厳しくなる。国は、原木シイタケはなくなってもいいという考えなのでしょうか」と訴えます。
国は力を入れて
積み下ろし作業に立ち会った常陸野産直センターの安本誠さんは言います。「国は原木の確保にもっと力を注ぐべきです。売り先の確保など、産直センターとしても、円城寺さんへの支援を続けていきます」
(新聞「農民」2012.3.26付)
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