「農民」記事データベース20120319-1013-11

旬の味


 3月に入ってようやく梅の花を見る。雨上がりの朝、外に出ると澄みわたる空気のなかに、初めて鶯(うぐいす)の鳴き声を聞いた。しかし、どこか情景がゆがんで見える▼2011年3月12日付の新聞が手元にある。紙面いっぱいの写真はいま見ても衝撃的だが、これはほんの一部だった。まだ原発の爆発も起こっていない。あの日から、「絆(きずな)」をよりどころに新聞・雑誌の記事や写真などを切り抜きスクラップしてきた。あらためてそれらに目を通すと、また涙があふれてくる▼特に「ある高校生の死」という1枚の写真には、いつもくぎ付けになる。2000人以上の犠牲者を出した宮城県石巻市では、火葬が間に合わず「仮埋葬」として集団土葬された。その一画にある「74」番の木札。親友の墓に花を添え、3人の高校生がうずくまるように座り、思い出を話しながら涙を流している▼東日本大震災から1年。いま、自分に何ができるのか。復興、生活再建、そして原発ゼロに向けた長いたたかいは、始まったばかりだ。

(あ)

(新聞「農民」2012.3.19付)
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2012年3月

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