生乳・食肉の価格保障しっかりと
畜全協・農民連が農水省要請
3月中旬に、2012年度の生乳の補給金単価や、食肉の安定価格などが「食料・農業・農村政策審議会 畜産部会」で決定されるのを前に、農民連と畜全協(畜産農民全国協議会)は3月1日、農水省に要請を行いました。交渉には、北海道や福島の酪農家ら10人余が参加しました。
国産粗飼料の運賃助成求める声相次ぐ
要請では、(1)生乳の補給金単価の大幅な引き上げ、(2)食肉安定価格の引き上げ、(3)肉用子牛の保証基準価格の引き上げのほか、(4)国産粗飼料の運賃への助成措置、(5)酪農かんがい事業など大規模・効率主義一辺倒の補助事業のあり方を見直すこと、(6)福島第一原発事故で被害を受けた畜産農家への万全の支援対策、(7)BSE対策の緩和をしないこと、を求めました。
昨年は原発事故による出荷停止などが影響し、生乳生産が落ち込む一方、稲ワラの放射能汚染をきっかけに牛肉価格が暴落。また福島県をはじめ東北・関東の広範な地域で牧草が放射性物質に汚染され、いまだに自給粗飼料を使えない状況が続いているなど、畜産をめぐる状況はますます深刻さを深めています。
要請では、「とにかく乳価や食肉価格など、畜産物の価格保障をしっかりしてもらいたい。とくに去年は生乳生産も減っており、そうした要素を反映した乳価にしてもらいたい」という声が相次ぎました。農水省は、「乳価は乳業メーカーと生産者団体の交渉で決められ、国は関与できない。(生産コストに価格が及ばない)加工原料乳の補給金は、従来どおりルールに則って算出する。生乳の生産は確かに減っているが、需要も減っている状況だ」と回答しました。
参加者は、「生産量が増えないのは、離農が増えているから。価格が低いために、経営難の農家は負債が返済できず、経営の良い農家も過重労働のわりに利益が増えず、精神的疲労から離農が相次いでいる。後継者も経営の見通しがたたない」「価格保障がしっかりしていれば、営農実態に合わない補助事業に頼らずとも、農家は地域や経営の実態に合わせて、ちゃんと生産が維持できるし、新たな投資もできる」と訴えました。
また、国産粗飼料への運賃助成を求める声も数多くあがりました。しかし農水省は、「補助金は事業の立ち上げ時だけを応援するもので、補助金がないと続けられない運賃の助成事業は非効率的。倉庫などのインフラ整備の方が効率的だ」と回答。
参加者は「本末転倒だ。北海道で抱えている余剰粗飼料を活用しないで、外国から輸入するなんて、それこそ非効率的ではないか。国産の粗飼料を供給しようとする際に、最大のネックになっているのが運賃だ」「今後も輸入穀物の高騰が続くと見られているいま、国産粗飼料への運賃助成は、飼料自給率を引き上げる大きな一歩になる」と、重ねて要求しました。
(新聞「農民」2012.3.19付)
|