「農民」記事データベース20120319-1013-01

農民連本部・福島県連が農水省交渉

国の責任で全量買い上げ、管理を

福島県産の米作付け制限

関連/後継者として経営をどう維持したらいいか
  /農水省が放射能汚染の「米作付け」公表


安心して米作りたい

 農民連本部と福島県農民連は3月8日、「作付け方針」について農水省に要請を行いました。

 冒頭、福島県連の根本敬事務局長が「農家は“なんでこんなことをしなければならないのか”という苦悩のなかにある。この方針は、生産者の“米づくりを続けたい”という要望を逆手にとって国の責任を放棄し、県・市町村・生産者に栽培・流通の管理を押し付けるものだ。国は栽培・流通に全責任を負うべきであり、福島県産の米は、国が責任を持って全量買い上げ、管理する体制を取るべきだ。基準値以下なら売れるのか。将来の農業再生に向けたビジョン、希望を示してほしい」と述べました。

 要請では、(1)(警戒区域・計画的避難区域を除く)すべての水田への作付けを認めること、(2)栽培・収穫物の管理にあたっては国が全責任を負うこと、(3)栽培にあたっては、今年の調査で100ベクレルを超えた地域の水田を「実証ほ場」として汚染の解明をすすめること、(4)収穫された米をそのまま食べる「ごはん」以外の用途へ活用をすすめること――を求めました。

 政府は農家まかせにするな

 農水省の担当者は、「地元の要望も聞きながら、米の安全・安心と信頼回復を大前提に、国の責任で『作付け方針』を決めた。全量買い上げではなく、基準値を超える米を一粒たりとも作らない、流通させないことが基本」などと答えました。

 二本松市(旧東和町)に住む安達農民連の佐藤佐市さんは「中山間地では放射性セシウムが山から田んぼに落ちてくる。米を作りながらどう汚染されているのかを検証していかなければならない。農家まかせにするのではなく、国が全量買い上げ、地域全体をきれいにしていく方針を示すべきだ」と迫りました。

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福島の実情を訴える佐藤佐市さん(中央)


後継者として経営をどう維持したらいいか

 要請行動に参加した福島市大笹生(100ベクレルを超え500ベクレル以下の地域)で米づくりをしている加藤晃司さん(33)

画像 担い手、後継者として、米づくりで伸びていかなければいけないと思っている。ところが、将来のビジョンを示しても、県や市などどこにいっても新たな設備投資にこたえてもらえない。今度の「作付け方針」では、天日干しを避け機械乾燥を実施するよう指導しているが、そのための設備投資をいったいどうするのか。

 この出来秋が一番心配だ。もし原発事故がなかったら、福島県産の米も他県産のように高く売れただろう。どうやって経営を維持していけばいいのか、このままでは先がわからない。ぜひ現状を見て、未来ある福島の農業にしていってほしい。


農水省が放射能汚染の「米作付け」公表

 農水省は2月28日、原発事故の放射能汚染を受けて、2012年産米の「作付けに関する方針」(作付け方針)を公表しました。この「作付け方針」によると、11年産で放射性セシウムが玄米1キロあたり500ベクレルを超えた地域の作付けは禁止になります。100ベクレルを超え500ベクレル以下の地域では、全量管理や全袋検査などを行い、基準値(100ベクレル)を超える米が流通しないことを前提に、作付けを認めています。作付けするためには、1筆ごとに耕作者を把握して台帳管理し、天日乾燥は避けるなど、細かな条件が付けられています。また100ベクレル以下の地域では、作付け制限は行いません。

(新聞「農民」2012.3.19付)
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2012年3月

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