耕作放棄地を復田して
電解水農法で米づくり
岐阜県可児市の小林司朗さん(59)は、2つの会社の社長さんです。一つは公共土木工事を中心とする小林工業(株)、もう一つは(有)楽農楽人(らくのうらくびと)です。公共事業が縮小して仕事が減るなか、「農を楽しみ、人との出会いを楽しむ」ことを目的に、2008年6月、可児市長と「特定法人貸付事業」の協定を結び、正式に農業に参入しました。当初は、耕作放棄地を復田して農地を確保してきましたが、最近は担い手のいなくなった農家から耕作を頼まれることが多く、約6ヘクタールまで規模が拡大してきました。
農を楽しみながら
人との出会いを…
岐阜・可児市「楽農楽人」の小林司朗さん
農業が蘇れば
「担い手不足で、荒廃している農地が年々増えてきています。楽農楽人では、そんな休耕田の再生に取り組んでいます。使われていなかった田を蘇らせ、子どもたちにもできるだけ農を経験してもらい、土や生き物に触れることで自然の大切さを感じてほしい。農を楽しむことを通した人との出会いは身近な食、環境を考えるきっかけにもなります。市民農園や親子の体験農業にも取り組んでいますが、いろんな人が加わって農業が蘇れば。それが私たちの願いです」―こう話す小林さんは1月、農民連に加入しました。
「くくり米」名で
「独自性がないと売れない」ことから、米づくりにもこだわる小林さんの栽培方法は、電解水農法です。強酸性や強アルカリ性の電気分解水を散布して、消毒・殺菌を行い、極力農薬を使いません。こうして収穫した米を地元の地名にちなんで「くくり米」として、「道の駅」などで販売しています。
|
強酸性水と強アルカリ水を散布(ホームページから) |
また、低グリテリンの医療用米や、あか米やみどり米など栄養価の高い古代米など、特殊な米づくりにも挑戦。病院やデイサービス施設などへの販路拡大、古代米は「古代餅(もち)」に加工する取り組みも始めました。
収穫した米は専用の冷蔵庫で保存し、注文が入ってから精米しています。「だから年中、新米のようなおいしさを味わってもらえる」という小林さんですが、「土曜も日曜もなくなり、休む暇もない」と、もっぱら本職は農業になってしまったようです。
土建屋さんより農業が本職に
農民連も応援
昨年12月には、市長から楽農楽人の「農業経営改善計画」が認定され、認定農業者になりました。しかし、農業に参入して3年がたちますが、経営は「赤字」続きです。さらなる規模の拡大と高い価格でも売れる米づくりへの挑戦が続きます。
|
小林さん(右)と可児さん |
可児市農業委員の可児すみ子さん(農民連会員)は、「小林さんは本当に一生懸命で、土建屋さんというよりは農家さんです。市の地産地消実行委員会から古代餅が『可児そだち』に認定されました。それが生物多様性の問題で知り合ったフードエキスパートの長田絢さんの目に止まり、レシピを考案してもらうなど、小林さんがめざしている『人との出会い』も広がっています。私たちも応援しています」と話しています。
(新聞「農民」2012.3.12付)
|