急速に進む海外の土地収奪
バイオ燃料需要増が引き金
ランドラッシュ、ランドグラビングなど海外土地投資の問題が世界的に大きくクローズアップされています。NPO法人バイオマス産業社会ネットワークなどのNGOはこのほど、都内で「海外農地投資の現状とバイオマスの持続可能な利用」のテーマでシンポジウムを開きました。
NGOなど
シンポで実態告発
投資面積は日本の国土を超える
同ネットワークの泊みゆき理事長は「バイオ燃料、食料、炭素クレジット獲得などを目的とする大規模な土地取得のための投資が世界中で行われている」と指摘。4460万ヘクタールという日本の国土を超える面積が投資の対象となっており、そのうち約2割がバイオ燃料作物向けだと述べました。
安価・無償で
強引立ち退きの例も
そのなかには、安価または無償で、地域住民への十分な情報提供や合意もなく数万ヘクタール単位の農地が移転・貸借され、立ち退きを求められるケースが多発している点を告発しました。
「食糧主権情報・活動ネットワーク」(FIAN)インターナショナルのソフィア・モンサルベ・スアレスさん(コロンビア)は、農地収奪に関する調査結果を報告しました。スアレスさんは、農民連も加盟する国際的農民組織、ビア・カンペシーナの「農地改革のための世界キャンペーン」運動にも携わっています。
スアレスさんは、農地収奪の重要な要因にアグロ(バイオ)燃料への需要があり、2050年には輸送燃料の20〜30%を供給するために1億〜6億5000ヘクタールの農地が必要だとの、国際エネルギー機関の予測を紹介しました。
資源利用の人権侵害の懸念も
こうした農地収奪によって利用可能な土地が減り、小規模農民のための農業政策の実施が困難になることや、アグリビジネスの利益とグローバル市場が優先されるなどの問題点をあげ、さらに、先住民族の権利や天然資源の利用への規制など人権侵害を引き起こすことへの懸念を述べました。
対策として、大規模農地の取得の防止、投資促進のルールを見直し、アグロ燃料の消費目標の撤廃、その利用を奨励する諸政策を中止することを提案しました。
製造・発電事業へ日本企業が出資
カガヤン・バレー地方農民連合(フィリピン)のドミエ・ヤダオさんは、森林、水田、トウモロコシ畑に恵まれたサン・マリアノ町で、農民が占有する森林地が、現地法人エコ・フュエル社と同町デル・ピラー村の村長、ワノール氏によって強制的に囲い込まれ、バイオ・エタノール企業用に登録されてしまったなどの実態を紹介しました。
また、「このバイオ・エタノールの製造・発電事業には、伊藤忠商事や日揮などの日本企業が共同出資し、農地の収奪と農業者の労働条件の悪化、人権侵害などを招いている」と告発しました。
(新聞「農民」2012.3.5付)
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