「農民」記事データベース20120305-1011-01

TPP交渉 重大な局面に

全加盟国との事前協議が一巡

関連/名古屋・北海道・長野でTPP説明会
  /TPP懸念事項の質問リスト 日本もアメリカに提出


日本政府

オーストラリア・ニュージーランドの支持えられず
アメリカの条件提示に“屈服”か

 TPP交渉への参加に向けて、関係国との「事前協議」が重大な局面を迎えています。

 2月7日に、アメリカ政府との「事前協議」で、アメリカ側が「日本が全品目をテーブルに乗せる用意がなければ、TPPに参加させない」と発言し、日本側は「全品目をテーブルにのせる」と答えていたことが明らかになりました。アメリカ側の参加条件の提示に対して、日本側は“屈服”し、「参加させてくれ」とお願いしているようなもので、日本政府の姿勢は断じて許せません。

 日本政府は21日にはオーストラリアと、23日にはニュージーランドと「事前協議」を行い、これでTPP加盟国すべてとの「事前協議」が一巡したことになります。

 玄葉光一郎外務大臣は21日の記者会見で、「オーストラリアから参加への支持を得られなかった」ことを明らかにしました。またニュージーランドからも参加支持を得られませんでした。

 日本がTPP交渉に参加するには、9カ国の加盟国すべてから「了承」が必要で、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドから支持を得るには、農産物の完全自由化が求められることは火を見るよりも明らかです。野田内閣はただちに「事前協議」を中止し、TPP交渉への参加を断念すべきです。


名古屋・北海道・長野でTPP説明会

具体的質問に何も答えず
“実績づくりだけの開催”の声も

〈名古屋〉

 2月19日、“国民の理解を深めよう”と、共同通信社と全国地方新聞社連合会が主催して、一回目の「TPPをともに考える地域シンポジウム」が名古屋市で開かれ、古川元久国家戦略担当大臣自らがTPP協定の概要を説明しました。今後、札幌市や横浜市など主要都市8カ所で同様の「地域シンポジウム」が開催されます。

 約340人の市民が参加した会場からは「TPPに参加したら、規制緩和でシャッター通りになってしまった商店街のように、農業も衰退してしまうのではないか」「医療保険制度がアメリカのように変えられてしまったら、お金がないと病院にもいけなくなる」「若者や障害者はいま仕事に就けない。TPPに参加すればもっとひどい雇用状況になってしまう」「遺伝子組み換え食品の表示など、食の安全が脅かされるのではないか」など、TPP参加を懸念する質問や意見が相次ぎました。

 こうした声に古川氏は「現時点では議論になっていない」「どのような要求が出てくるかはこれから」「参加するかどうかまだ決めていない」などと答えるにとどまり、参加者からは「不安は解消されなかった」という不満の声が出されました。

画像
古川大臣(右から2人目)に質問する参加者(名古屋市国際会議場)

 パネリストとして参加した農林中金総合研究所の岡山信夫専務は「参加のメリット、デメリットをしっかり説明してもらいたい」、またタレントの大東めぐみさんも「『不参加』という選択肢も持って交渉にあたってください」と注文を出すと、会場から拍手があがっていました。

〈北海道〉

 2月15日、北海道TPP問題連絡会議(事務局・道政策審議局と22団体)が主催して、「政府からTPPの状況説明を求める会合」が札幌市で開かれ、37団体から約120人が参加しました。

 開会にあたり、道総合政策部長の荒川裕生氏は「TPPは国民的な議論がなされないできている。食の安全や国民生活にも重大な懸念があるにもかかわらず、中身がほとんど見えてこない」とあいさつしました。

 説明にたった政府の大杉武博氏(国家戦略室内閣参事官)は「めざすところはFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)」と述べ、アジアの成長を取り込むことがTPPの目的だという見解を示しました。そして、「すべての商品をテーブルにのせることを閣議決定しているが、実際にどうなるかは交渉によって決まる」という説明にとどまり、具体的な問題にはほとんど言及せず、「TPP協定と食と農の再生、自給率向上は両立させる」など、根拠のない幻想をふりまくものでした。

 北農中央会から「国益とは何だ」という質問が出されましたが、「昨年11月11日の野田首相の記者会見そのものがそうだ」と意味不明な抽象論に終始。具体的な問題点の指摘には、ほとんど答えられませんでした。

(北海道農民連 野呂光夫)

〈長 野〉

 2月14日に長野県主催の政府担当者によるTPP説明会が長野市であり、参加しました。参加者は200人くらいで約9割が県の職員などで、一般参加者は1割以下でした。

 参加者から質問が出されましたが、具体的になればなるほど「細かなことは決まっていない」「わからない」の一点張りでした。

 私も「アジアの成長を取り込むといっても、成長している中国やインド、韓国などはTPP交渉に入っていないではないか。TPPは事実上日米の経済協定にすぎない」など、そもそもTPPに参加する意義がないと思うがどうかと質問しました。

 会場からはじめて拍手がわきましたが、政府側は「アメリカ中心だが、今後、他の国も参加するかもしれない」などと話した後、自分の答弁に自信がなかったのか、「これでお答えになったでしょうか」と言っていました。

 今回の政府説明会は、いざTPPに参加するという時に「説明不足だ」と言われないよう、実績づくりのために開いただけのような気がしました。しかも、参加者の大部分は県の職員で、なんだか原発立地や再稼動のための地元説明会と同じ原理だなと思いました。

(長野県農民連 弦巻吉春)


TPP懸念事項の質問リスト
日本もアメリカに提出

日本共産党 笠井議員が暴露

画像 日本共産党の笠井亮議員は2月20日、衆議院予算委員会でTPP交渉参加に向けたアメリカとの「事前協議」の内容を明らかにするよう、政府に迫りました。

 質疑のなかで笠井議員は、「アメリカに言われっぱなしではないか」と政府の姿勢を批判すると、古川元久国家戦略担当大臣は「日本側からもアメリカに懸念事項の質問リストを2月16日に提出した」ことを初めて明らかにしました。

 笠井議員は、アメリカ側がこの質問リストに「できるかぎり回答したい」と発言していることを取り上げ、重ねて質問リストの提出を求めましたが、「(リストの中には)輸入食品の安全基準の緩和や、外国人専門家の資格、免許の承認の受け入れなど」を盛り込んでいるとしか答えず、玄葉光一郎外務大臣も「適時整理をして、できるだけ早く公表したい」と答弁。

 笠井議員は「こういう協議の姿勢では、とても国益は守れない。質問リストを国民に明らかにする(必要がある)。アメリカがどう言ったかについてもちゃんと明らかにしなかったら、こんな(事前協議)ではだめだ」と厳しく追及しました。

(新聞「農民」2012.3.5付)
ライン

2012年3月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2012, 農民運動全国連合会