多くの支援・協力で
導入の放射能分析機器
いま大いに威力を発揮
農民連食品分析センター所長
八田純人さんに聞く
原発事故のあと、私たちはかなり焦りました。食品の分析方法としては、高額な機器を使った機器分析法と化学反応の結果を見て判断する化学分析法があります。これまで残留農薬問題などいろんな事件がありましたが、化学分析という方法で何らかの答えを出してきました。しかし、今回の事故は放射能が相手なので、どうしても機器による分析をせざるをえません。放射能を分析する機器がなければ何もできない。まるで羽をもぎとられたトンボのようなものでした。
期待の声が多く
そうしたなかで、農民連の分析センターなら何かしてくれるんじゃないか、という声がどんどん届くようになりました。そうした声に応えられなくてたいへんつらい思いをしましたが、「何とかしてこの状況に応えなければならない」ということで、5000万円募金を広く呼びかけました。多くのみなさんのご支援で目標を超過達成することができました。心からお礼申し上げます。
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食品分析センターのスタッフたち。左から八田所長、泉潤、仲前聡、坂本一石、小田川遥平の各氏 |
社会貢献したい
最初に機器が導入されたのは昨年の8月12日でした。その以降12月までに2400件を超える農産物や土壌などの検査を行ってきました。このうち、生産者からも消費者からも不安の声が大きかったのが、お米です。私たちも「米から放射能が出たらどうしよう」と不安の中で検査を進めていました。ピーク時には、朝6時半から夜10時までフル稼働という状況も続きました。そうしたなかで1400件余りの米を検査し、このうち放射能を検出したのは12件でした。検出限界はセシウム134、137とも20ベクレルで、これは行政が行っているレベルと同じ試験にあたります。不安の大きかったお米ですが、検出された12検体すべてが基準値以下で、汚染レベルも高くなくホッとしました。これらのデータは今、整理中ですが、社会貢献できるようなんらかの形で公表したいと思っています。
分析機器は3種
これまでにどういう機器を導入したのかというと、一つはキャンベラ社のインスペクター1000で、玄米900グラムを使用する試験での検出限界は10分間で3〜7ベクレルです。4月から暫定規制値が500ベクレルから100ベクレルに引き下げられますが、十分対応できる機器です。次に、アロカ社のシンチレーションスペクトロメータですが、これは福島県連に配備したものと同じものです。検出限界は10分間で20〜30ベクレルの性能ですが、まだ感度改良の余地がある機器です。そして、最も高性能な機器がゲルマニウム半導体検出器です。フランスの労働組合の支援・協力のもと、まもなく導入されます。この機器なら、検出限界を大幅に引き下げることができるうえ、より間違いなく高精度の検査を行うことができます。
分析機器ひろく活用を
いま、分析センターはスタッフ5人で対応していますが、不安があればどんどん相談してください。大学の先生とも共同して調査活動も行っています。多くの方々の支援と協力で導入した分析機器です。おおいに活用していきましょう。
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食品分析センターの連絡先 TEL・FAX 03(3959)5660 メール power8@nouminren.ne.jp
(新聞「農民」2012.2.20付)
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