COP17の結果と今後の課題
環境NGO 早川光俊さんに聞く
交渉スピード加速させ
気温上昇を2度以下に
ダーバン会議では、京都議定書の延長問題と並んで、京都議定書に参加していないアメリカや、排出量を急激に伸ばしている途上国、とくに中国やインドなどを含めた2013年以降の世界の温暖化の枠組みをどうつくるか、またその制度にどのように法的拘束力を持たせるのか、ということも課題でした。
ダーバン会議では、この課題でも重要な合意がなされました。気候変動枠組み条約のもとでアメリカや中国を含むすべての国を対象にした新たな枠組みづくりを交渉する新しい作業部会(ダーバン・プラットフォーム)を設置し、遅くても2015年までに合意することが決定されたのです。しかし問題なのは、この決定が発効・実施されるのが2020年からだということです。これでは遅すぎます。
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COP17の最終日、決議が採択され拍手を送られるマイテ・マシャバネ議長(中央の女性)=IISD |
このままでは間に合わない
COP17全体の評価ですが、京都議定書の第2約束期間の継続が決定され、世界全体の枠組み作りのプロセスが決まったことは、前進と評価できます。しかし決定の中身については、地球温暖化防止に役立つものにはほど遠い、と思います。とりわけ世界全体の気温上昇を2度に抑えるという目標は確認されているものの、それを達成するために必要な温室効果ガスの削減量と、各国政府が掲げる削減目標の削減量とは、きわめて大きなギャップがあります。
もう一つは、交渉の進展があまりに遅すぎます。今回、京都議定書の延長が合意できたといっても、先進国の削減目標も具体的な数字は空白のままで、「今年のCOP18で決める」ことが決まっただけです。世界全体の枠組みの発効・実施も、温度上昇を2度に抑えるには、2020年からでは間に合わない可能性があります。国際NGOのオックスファムは、「(この交渉スピードでは)4度上昇への道を、眠りながら歩いているようなものだ」と批判していますが、的確な表現だと思います。
IMO(世界気象機関)など国際機関からのリポート発表が相次いでいますが、どの報告でも地球温暖化は明らかに加速しています。もっと温暖化防止の議論を加速させるよう、世論を高めていかなければなりません。
エネルギー政策の民主化が必要
日本ではいま、エネルギー政策の策定をめぐって、(1)内閣府の「エネルギー・環境会議」、(2)原子力委員会の「新大綱策定委員会」、(3)経産省・総合資源エネルギー調査会の「基本問題調査会」の3つの組織で議論が行われており、春までにそれぞれが結果をまとめ、さらに夏には一つのエネルギー政策にまとめられようとしています。
日本のエネルギー政策に求められることは、次の5つがあると思います。(1)核燃料サイクル政策の中止と脱原発、(2)省エネの推進、(3)再生可能エネルギーの普及、(4)発電事業と送電事業の分離といった電力事業の抜本的改革、(5)エネルギー政策策定の民主化、です。
福島の原発事故を経て考え直してみると、やはりエネルギー政策の策定過程を民主化する必要があります。エネルギーの基本政策は「エネルギー需給の長期見通し」といいますが、国家の基本政策が「見通し」などという名前でまかり通って、国会でも十分な議論もされず、最近まで電力会社と経産省OBと御用学者のごく少数だけで議論されてきました。
私たち市民は、エネルギー政策での情報公開と政治参加のシステムを要求していくべきですし、またそれが将来世代に対する私たちの責任だと思います。
(おわり)
(新聞「農民」2012.2.6付)
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