「農民」記事データベース20120130-1006-05

COP17の結果と今後の課題

 昨年11月から12月にかけて、南アフリカ共和国のダーバンで、地球温暖化に向けた国際的枠組みを話しあう「国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(略称COP17)」が開催され、政府代表団やNGOなど194カ国から約2万人が参加しました。

 環境NGOとして会議に参加したCASA(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議)専務理事で弁護士の早川光俊さんに、COP17の結果と日本の温暖化・エネルギー政策について、話を聞きました。


アフリカを京都議定書の墓場にするな

 京都議定書は途上国の希望

画像 ダーバン会議の最大の課題は、2012年末に第1約束期間(2005〜2012)の切れる京都議定書の継続が合意できるかということでした。ダーバンで一定の合意ができないと、第2約束期間との間に空白期間が生じてしまうことがはっきりしていたからです。

 京都議定書は、「温室効果ガスを長い間排出し続けてきた先進国には、地球温暖化に対する歴史的責任があり、まず先進国が温室効果ガス削減の努力をすべき」として、「共通だが差異ある責任」という原則にたって、先進国の温室効果ガスの削減目標を定めた条約です。しかし日本、カナダ、ロシアは、「議定書を離脱したアメリカや、排出量を急増させている中国が削減義務を負っていないのは不公平だ」として、京都議定書の継続に反対の主張をしてきました。

 しかしダーバン会議では、途上国から「京都議定書の第2約束期間は絶対条件だ」という意見が相次ぎました。先進国に排出削減を義務化する「法的拘束力」のある仕組みは、京都議定書の第2約束期間しかなく、干ばつや水害など温暖化の悪影響に苦しんでいる途上国にとって、京都議定書は「希望の星」ともいえる国際条約だからです。

 アフリカ諸国のグループ代表は会議初日に、「アフリカの地を京都議定書の墓場にすることは許さない」と2回も繰り返し、会議に非常に大きな影響を与えました。またあるアフリカ代表は、「(京都議定書を葬(ほうむ)ることは)温暖化によって命の危機にさらされている人々へのジェノサイド(虐殺行為)だ」とすら言っていました。私たちは、先進国の一員として、また京都議定書に強硬に反対する日本の一人として、途上国の人々のこの強い危機感をしっかりと受け止めなければなりません。

 日本政府ですが、僕もこれまで16回のCOPを傍聴してきましたが、今回ほど相手にされなかったCOPはありませんした。最終日には、3カ国と予定されていた2国間交渉が2カ国からキャンセルされてしまったほどです。それほど京都議定書の第2約束期間を拒否する日本の姿勢が強硬だったのです。

 交渉は非常に難航し、終了予定日の翌々日の朝まで続けられましたが、最終的に、京都議定書の第2約束期間が2013年から始まること、また各国の具体的な削減目標は今年開かれるCOP18で決められることが決定しました。

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12月3日にダーバン市内で行われたパレードに参加するビア・カンペシーナの隊列(「わたしたちの環境サミット」提供)

 第2約束期間を拒否した日本

 しかし日本は、第2約束期間への不参加を表明しています。これは世界第5位の排出国である日本が、削減目標を持たない国になってしまった、他国の努力にタダ乗りするだけの「フリーライダー」になってしまったということです。これはたいへん恥ずかしいことです。経団連などは「自主的に努力する」などと言っていますが、国内対策だけでは6%という第1約束期間の削減目標も達成できそうにないというのに、法的拘束力もない目標など、真剣に追求するわけがありません。

 日本政府は、国際公約でもある「2020年までに25%削減」という目標も、福島第一原発事故を理由にして、放棄する動きが顕著になってきています。

 私たち市民の世論で、「25%削減」という目標を放棄させないことが、国際的にも、日本のエネルギー政策上からも、非常に重要な焦点になってきています。

(つづく)

(新聞「農民」2012.1.30付)
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2012年1月

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