東電は誠意をもって
直ちに賠償せよ
“つらい、悔しい思いでいっぱいだ”
関連/東電の遅い対応が農家の命奪った
「年内に賠償金を支払え!」「政府は被災者の命と暮らしを守れ!」「原発をなくせ!」―農民連は年の瀬も迫った12月26日、食健連の仲間とともに、東京電力本社賠償請求行動を行いました。原発事故から9カ月余り。福島の米をはじめ、放射能汚染はとどまるところを知らず、農民、国民を苦しめています。ところが、東電はいまだに全面的な賠償に応ぜず、被災者の「年を越せない」という切迫した要求に背を向けています。どうして黙っていられようか。
政府は「収束宣言」撤回せよ
本社前行動 350人の怒りの声響く
年内の賠償金支払いを求めて農民連が東電本社前で開いた行動には、福島からバス6台を連ねて200人以上が参加し、応援にかけつけた人々を含め、総勢350人の賠償を求める怒りの声が響き渡りました。
農民連の白石淳一会長が主催者あいさつ。「放射能汚染で農民の生活の糧が奪われている。安全対策を怠った東電は全面賠償に応じよ。政府は原発事故の『収束宣言』を撤回せよ」と求めました。
福島県連の亀田俊英会長は「2日前に隣組の忘年会を開いたが、3月11日以来の再会となった。最初にみんながしたことは、『声をかけないで逃げてごめん』と、泣きながら抱き合うことだった。全面賠償を何としても勝ち取ろう」と訴えました。
全労連の小田川義和事務局長、国公労連の宮垣忠委員長、新日本婦人の会の神出泉副会長、全国商工団体連合会の西村冨佐多副会長が激励のあいさつ。福島からかけつけた3人が怒りのスピーチをしました。
放射能被害を受けている産地を代表して、宮城県連の鈴木弥弘事務局長と千葉県連の森吉秀樹事務局次長が「東電は謝罪し、すぐに賠償しろ」と声を張り上げました。
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東電本社前で「年内に支払え」とこぶしをあげる福島の農民たち |
支払い待つ間に命絶つ、悔しい
安達地方農民連の本多芳司事務局長(水稲と果樹) いまリンゴを2つ手にしているが、リンゴとサクランボを作っている農家が2日前、賠償をもらう前に自ら命を絶ってしまった。親子2代で何年も手をかけて作ってきたリンゴを家族で協力して、東京の親せきに送るなど血と汗のにじむ努力で販路を拡大してきた。
しかし、原発事故によって、こうした努力が一瞬にして壊されてしまった。12月1日に東電に賠償の請求書を渡し、年内の支払いを待っていた矢先に、リンゴ畑で命を絶った。私も賠償の手伝いをしてきたが、悔しい思いでいっぱいだ。東電とたたかい続ける。
悲しみを怒りに変えがんばろう
福島県北農民連の阿部哲也副会長(果樹) 「ものを作ってはだめ。作っても出荷できない。売れない。売っても半値以下」と、辛い1年だった。この責任は国と東電にあることは明白だ。そして「収束宣言」とはいったい何事か。何を考えているのか。みなさん、損害賠償をもらっただろうか。子どもたちが学校の校庭にもどってきただろうか。避難している人たちが戻ってきただろうか。この怒りを告発しよう。長いたたかいになるが、悲しみを怒りに変えてがんばろう。
長いたたかいを一緒にがんばろう
浜通り農民連の杉和昌会長(酪農と水稲) 原発事故後は牛乳を搾っては投げた。新潟に避難するとき、牛1頭1頭に頭を下げて出て行った。4日後に戻ったときは、搾乳できる状態ではなかった。飼い続けることができなくなり、30頭の牛を自ら処分した。悔しい。今年米が作れるのかどうかわからない。東電との長いたたかいになるが、これからも一緒にがんばろう。
本社交渉
損害賠償を年内に支払え
福島の農家が怒り爆発
東電の担当者との交渉では、12月1日請求分を年内に支払うことや、損害賠償の支払いを迅速に行うため現地裁量で支払いが行えるようにすることなどを要求しました。
福島県連の亀田英俊会長は「農家は“盆暮れ勘定”でやりくりしており、年末に種代や肥料代などの請求が来るので年内に損害賠償が支払われないとたいへんなことになると、何度も言ってきたではないか。1日も早く支払うべきだ」と追及しました。東電側の「来年1月末までに支払う」との回答に対して参加者は、「現地の職員はがんばっているんだ。なんで来年の1月までかかるのか。仮払いでもいいから年内に払ってほしい」「どこがネックになっているのか。なぜ仮払いができないのか」「浜通りでは、本払いの農家にも年内に仮払いしている。どうなってるんだ」「東電本社の遅い対応で自ら命を絶った果樹農家がいる。支払われる時期がわかっていたらこんなことは起こらなかったんだ。なぜこうした犠牲者を出さなければならなかったのか、本当に悲しくて悔しい。同じ状況の仲間がいるので、大至急支払ってほしい」などと怒りの声をあげました。
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“本当に悲しくて悔しい”―東電の担当者に訴える本多さん |
約束した回答せず緊急に年末再行動
東電側は27日までの回答を約束しましたが、被害者の深刻な実情をいっさい無視する“ゼロ回答”。そのため、農民連本部と福島県連の役員は28日、東電本社を再度訪ね「抗議文」を手渡し、「もう自殺者を出したくない。同じ仲間にいつまで支払うのか明言せよ」と迫りました。
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また、野田首相あてに「原発事故そのものが収束にいたった」という発言の撤回や、国は暫定基準値を超えた米が検出された市町村のすべての米を買い上げることなどを申し入れ、交渉しました。
(新聞「農民」2012.1.16付)
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