「農民」記事データベース20120102-1003-11

沖縄県の米屋さん訪ねて

農民連ふるさとネットワーク 横山 昭三

関連/飛躍龍年

 激しい競争のもとで、産地や生産者と提携して米の販売にがんばる沖縄県の(株)仲間米屋(仲間朝信会長)とそのグループの米屋さんを訪問しました。


産地に思いを寄せて米を販売

 大手に対抗するもう一つの流れ

 アメリカの占領下で、本州とは違う道を歩んだ沖縄の米流通。外国と同じように精米での流通が主流を占め、今でも大手卸の精米が市場の50%以上を占めています。

 こうした中で仲間米屋は、30数店舗の米屋さんを組織。店ごとに精米機を設置し、産地や生産者の顔の見える米を搗(つ)き立ての精米で紹介するシステムを立ち上げ、大手の米流通に対抗する“もうひとつの流れ”を築いてきました。現在、沖縄には北海道から九州まで14の道府県の米が農民連ふるさとネットワークを通して届けられ、年々その実績を伸ばしています。

 仲間会長は「精米機の設置から店の経営まであらゆるサポートをしてきた。時には人生相談まで……」と話します。一方、グループの米屋さんは、「今うちがあるのは、仲間さんのおかげ」と一様に語り、仲間さんへの信頼は厚いものがあります。

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画像 「米八十米」の野口和彦さんと、「義援金は農民連を通じて支援に活用」と書かれた募金箱

福島米 汚染広がり販売断念
東電・国のズサン対策に怒り

 米で福島を応援たびたび産地へ

 仲間米屋が農民連と付き合うようになったきっかけは福島の会津農民連で、産地をたびたび訪問し生産者と交流を深めてきました。だから、福島の米が大きなウエートを締めています。それだけに、3月11日の大震災をわがことのように受け止め、どの店にも募金箱が置かれ、被災地の写真や「がんばろう東北」などの応援スローガンを掲げる店もあります。みなさんからすでに50万円を超える募金が農民連に寄せられています。

 東電の原発事故による放射能汚染の広がりで、“福島の米を敬遠”する動きのなか、グループの米屋さんらは「食べて応援」を呼びかけました。那覇市にある生協の店舗内で玄米を販売する米八十米(こめやじゅうべい)の野口和彦さんもその一人です。野口さんは、お客さんから「福島の米はいつ来るの?」と督促されるそうです。

 しかし、放射能検査で遅れていた福島の米がやっと入荷し、販売を始めた矢先に、「高濃度の放射能検出」「出荷停止」などの報道が連日続き、“福島”を前面にした販売は断念せざるを得なくなりました。仲間さんやグループの米屋さんらは、「農民連は、生産者ごとに米を検査して出荷してもらったのに、本当に残念だ。米屋の努力も限界」と肩を落とし、東電・国のズサンな対策に怒りをあらわにしていました。

 米を大事にする県民贈答や祝い事に活用

 沖縄の人たちは、日常の生活の中で、命の糧として主食の米を大事にしています。「お盆や正月の贈答や祝いごと、そしてお礼の品として米は欠かせない」と言います。

 赤ちゃん誕生のお祝いの返礼用として力を入れている「米ふぁみりぃ」(首里市)には、赤ちゃんの写真入りの米袋がずらりと展示され、思わず心がなごみます。店主の山田義哲さんは「贈答用が売り上げの60パーセントを占めています。やはり贈って喜ばれるのは、生産者の顔の見える米ですね」と話していました。

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赤ちゃんの顔写真が入った米袋がズラリ(米ふぁみりぃ)

 また嘉手納基地を視察しましたが、離発着をくり返す戦闘機のごう音に県民の「がまんも限界」という思いを実感しました。沖縄農民連とも交流のある米屋「穂の香」(那覇市)の高良勝美さんは、基地のない平和な沖縄の実現に期待を寄せていました。

 仲間米屋をはじめグループの米屋さんらは、「産地・生産者の思いをお客さんに伝えて販売に努力したい」と意気込んでいます。今回の訪問を通じて、準産直米の原点を見る思いがして、おおいに励まされました。


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茨城・石岡市  大塚 育子

(新聞「農民」2012.1.2付)
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2012年1月

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