本の紹介
福島は訴える
福島県九条の会編
福島の人びとが自分の言葉で
語る原発と願い、そして闘い
ごく普通の「暮らし」を一瞬で奪い去った福島第一原発事故。「3・11」後の福島を、福島の人びとが自分の言葉で語った本「福島は訴える 『暮らし』『子育て』『なりわい』を原発に破壊された私たちの願いと闘い」が、「福島県九条の会」から出版されました。
登場するのは、26人の福島県民です。教師、高校生、保育士さんやお母さん、漁民、スーパー経営者や自動車の修理工、除染に取り組む地方議員、そして福島県農民連の亀田俊英会長や根本敬事務局長をはじめ、果樹や稲作、畜産など農民連の会員農家も数多く寄稿しています。
第1部、第2部では「暮らし」「子育て」「なりわい」の破壊が当事者の言葉でつづられています。
「牛にエサを食べさせ、搾った牛乳は廃棄処分。それが3カ月続いた。畑に穴を掘って捨てるが、すぐにいっぱいになってしまう」(川俣町の酪農家、斎藤房子さん)。
「これから先、放射能と死ぬまでつきあわなければならないかと思うと、切ない、やりきれない思いでいっぱい。しかし子どもたちの将来を考えると、希望の持てる農業の構築こそ早急に求められている」(湯川村の畜産・稲作農家の菅沼弘志さん)。
「ころんだユウ君が手のひらを心配そうに見ていました。もう安心して転ぶことができないのだな、と思いました。子どもはころびながら大きくなるというのに、くやしくてたまりませんでした」(福島市さくら保育園園長の斎藤美智子さん)。
第3部では、自治体の対応と除染に向けた市民の取り組みを紹介。第4部では原発を推進してきた歴史的背景や真の地域社会再生への提言もされており、原発と憲法、平和、復興政策の全体を見すえた一冊となっています。
福島に住む人々がいま、何に苦しみ、何とたたかい、何を願っているのか――「3・11」後の福島で生き抜こうとする人々と連帯する時、ぜひ読んでおきたい本です。
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▼福島県九条の会 編
▼出版社 かもがわ出版
TEL 075(432)2868
▼定価 1600円+税
(新聞「農民」2011.12.19付)
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