米 先物取引
開始から4カ月
基本ルールもあっさり変更
乱高下の末、取引実績は停滞
農水省が関係者の反対を押し切って認可した米の先物取引の試験上場。認可に際して農水省は「農家や米業者の参加と一定の取引が見込める」「値幅制限など価格の乱高下を防ぐ手立てがとられている」などと根拠を説明してきました。しかし、取引開始から4カ月を経て、認可の前提とはほど遠い取引の実態が明らかになりました。
東京穀物商品取引所(東京穀取)では、8月のスタート時に初日から自ら決めていた基準価格を2900円も引き上げ、値幅制限も3倍以上広げるなど、取引の基本となるルールをあっさり変更する乱暴な運営ぶりで、8月9日には午前と午後で2000円(60キロ)もの乱高下を記録しました。
また、関西商品取引所(関西商取)は、理事長が経営する受託会社が1社でほとんどの取引を独占する異常ぶりです。こうして形成された取引価格は信頼性が得られるわけがなく、農家や米業者(当業者)が参加する余地などのない投機の場であることを示しました。
注目の現物決済もごくわずか
取引の実績は、東京穀取の場合で1日5000枚(1枚100俵)を目標としていましたが、取引を開始した8月の出来高は1日平均1000枚を超えましたが、9月以降は目標の1割にも満たない低調振りです(グラフ参照)。関西商取も1万枚を超える出来高でスタートしましたが、次第に下降線をたどり、11月の1日あたりの出来高は600枚程度にすぎません。
取引価格は両取引所ともに異常な高値でスタートしましたが、その後、取引の停滞とともに価格も下げ基調が続き、「安値安定」状態となっています。
こうしたなか、このほど最初の決済月(11月限(ぎり))を迎え、現物での決済が注目されました。東京穀取は18枚の現物受け渡しがありましたが、これは8〜11月の出来高4万3492枚に対してわずか0・04%。また関西商取の現物による決済は14枚(700俵分)で、8〜11月の出来高8万5699枚の0・016%にすぎず、両取引所とも99%以上が決済月までに買い手は転売し、売り手は買い戻しによって売買の差額を精算する「差金決済」が行われたことになります。ここでも先物取引が商品の実際の受け渡しを前提にしない“マネーゲーム”の場であることを物語っています。
2年を待たずにただちに終了を
今、東京穀取と関西商取は、セミナーを開くなどして当業者の取り込みに必死で、農水省も「農家にも現物市場と先物市場の二つの選択枝ができた」「リスクヘッジに有効」などと、なんとか先物取引を軌道に乗せようと躍起になっています。しかし、いま当業者が求めているのは、安定した価格での安定した取引であり、投機的取引での利益ではありません。政府・農水省がやるべきことは先物取引など必要としない米政策の実施です。
今、東日本大震災と東電の原発事故の影響で、米の需給も価格も先行きが不透明な状態が続いているときに、米を限りない米ビジネスの世界に引き込む先物取引などしている場合ではありません。
わずかな期間に前提が崩れ、認可の誤りは明白です。農水省は試験期間の2年を待たずに、ただちに認可の取り消しを決断すべきです。
(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)
(新聞「農民」2011.12.19付)
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