本の紹介
小西雅子 編著
地球温暖化の目撃者
地球温暖化の現実を
現場にいる人の言葉で
11月末から、南アフリカのダーバンでCOP17(気候変動枠組み条約第17回締約国会議)が始まりました。COP17を前に、WMO(世界気象機関)が「温室効果ガスの濃度が加速度的に上昇しており、このままでは破局的シナリオに向かっている」というリポートを出すなど、気候変動の深刻さを突きつける報告が国際機関から相次いで発表されています。
こうしたなか、地球温暖化が及ぼす深刻な悪影響を、一般の人々にも広く知ってもらいたいと、美しい地球の姿と温暖化で変わりゆく姿をカラー写真いっぱいで紹介した本が出版されました。それがこの本です。
WWF(世界自然保護基金)は、現在すでに世界各地で深刻な影響を与えている地球温暖化について、実際に被害を受けている人々が証言する「地球温暖化の目撃者」というプロジェクトに取り組んでいます。この本にはそのなかからアジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界8地域、26人の「目撃者」たちの証言が収録されています。
注目されるのは、多くの「目撃者」が農民や遊牧民であり、いかに温暖化が農業や食糧生産を危機に追い込んでいるかを、生々しく証言していることです。干ばつと洪水の両方に苦しむアフリカ・ガーナの畑作農民、病害虫の増加と雹(ひょう)害に立ち向かうドイツのリンゴ農園など、温暖化の被害や経験が、決して専門家ではない、現場にいる人の言葉で、せつせつと語られています。
こうした目撃者の証言を集めた第2章のほかに、第1章では温暖化の科学がわかりやすく解説され、第3章では温暖化を防ぐために必要な国際交渉と、エネルギー政策や温暖化対策についての解説、提言がされています。この一冊で地球温暖化の現状、科学、そして必要な対策という全体像が把握でき、地球温暖化問題の良い入門書となっています。
▼編著者 小西雅子(WWFジャパン 気候変動・エネルギープロジェクトリーダー)
▼出版社 毎日新聞社
▼定価 1600円(税別)
(新聞「農民」2011.12.12付)
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