「農民」記事データベース20111212-1001-05

バイオエネルギー
現状は? 将来は?

国際シンポ


利用・供給ともに伸び続ける
食料と燃料の“競合”に議論集中

 農水省と、バイオ燃料を推進する国際団体「グローバル・バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)」は11月17日、都内で国際シンポジウム「バイオエネルギーの現状と将来」を開きました。

 エネルギーにかかわる各組織と各国の代表が基調報告。GBEPの代表は、持続可能なバイオ燃料を考える際の3つの柱(環境、社会、経済)と24の指標について説明しました。

 国際エネルギー機関の代表は「石油危機以降、1970年代に入り、バイオマス・エネルギーの利用が徐々に伸び、バイオエネルギーの供給は現在、世界の主要エネルギーの約10%、世界の電力供給の1・3%を占めている。バイオ燃料の生産は、ブラジル、アメリカ、EUで大半を占めている」と述べました。

 各国代表の報告は……(以下、要旨)。

 〈アメリカ〉

 バイオエネルギー政策が、経済発展、雇用拡大、輸入機会の拡大につながっている。一方、世界的なバイオマスの使用が森林伐採をもたらしている。西アフリカで持続可能なバイオ燃料を促進するプロジェクトを、他の国際機関などとともに行い、バイオ燃料は近代的なエネルギーサービスを途上国に提供するための必要な戦略となっている。

 〈ブラジル〉

 バイオ燃料は世界的なエネルギー需要に貢献し、アメリカに次ぐバイオエタノールの生産国になり、サトウキビがその主力になっている。なかでも砂糖エネルギー部門は、100万人以上の雇用を生み、その収入は最低賃金より高く、労働基準も産業間の取り決めにより規制されている。

 〈インドネシア〉

 バイオ燃料の奨励策として、付加価値税の免除、原料生産への金利の優遇、バイオ燃料ビジネスを進める際のライセンス取得の簡素化などを採用している。ヤトロファや、藻類の研究開発も行い、ヤシのプランテーション開発で、ヤシ油の生産に力を入れている。

 〈スウェーデン〉

 1975年には80%だった化石燃料が、現在では、50%が再生可能エネルギーで、そのうち32%がバイオ燃料になっている。木くずや伐木からの副産物でつくるバイオ燃料は、林業に依存していること、一時期、森林伐採による被害がでたため、今では森林保護にも力を入れている。さらに地方の暖房も70年代までは9割以上を石油に依存していたが、今では8割をバイオ燃料に頼っている。

 〈ドイツ〉

 バイオ燃料による動力は、ナタネを使ったバイオディーゼルが大半を占め、今後も熱や電力への使用がさらに伸びること、これが経済的な発展や雇用の拡大につながっている。今後、ペレットなどの固体バイオエネルギーの輸入や、輸送機関をバイオマス由来の電気を使うことによって、各エネルギー市場を結びつけることなどに挑戦したい。

 〈日本〉

 バイオエタノールの製造にはサトウキビやテンサイによる糖質系のもの、米、麦、トウモロコシによるデンプン系のもののほかに、間伐材や建築廃材などを使ったセルロース系がある。全国でバイオエタノールは3・1万キロリットル、バイオディーゼル燃料は1・3万キロリットルが製造されているが、2017年までの目標、50万キロリットルにはほど遠い。バイオマスの利活用により、農山漁村の活性化、雇用の促進、エネルギー供給源の多様化などが期待される。

 最後に、シンポでは、質問などに答える形で、報告者全員が登壇し、討論しました。なかでも食料と燃料との競合関係の問題に議論が集中。「一つの答えがあるわけではない。環境、社会的・経済的状況のなかでの各国の条件を考えるべき。産業のなかでバランスをみていくことが必要になる」(ブラジル)、「同じ農産物から、食料と燃料が発生するため、全体のバランスを考えていくことが大事」(GBEP)などの意見が出されましたが、決定的な解決策は示されませんでした。

(新聞「農民」2011.12.12付)
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2011年12月

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