「農民」記事データベース20111205-1000-15

全国小水力発電サミットin黒部

今こそ私たちの手で
自然エネルギー作ろう

関連/小水力発電とは…

 小水力発電の推進に向けた「全国小水力発電サミットin黒部」が、11月19、20日の両日、富山県黒部市で開催されました。2回目となる同サミットには、震災後の自然エネルギーへの関心の高まりを反映して、自治体関係者や事業者など全国から670人が参加し、熱心な討論や交流が繰り広げられました。


 農業用水活用し小水力発電所に

画像 北アルプスなど3000メートル級の山岳地帯を擁する富山県は、豊富な水資源に恵まれ、「包蔵水力(水力発電に利用できるエネルギー量)」は全国2位を誇っています。サミットでは、富山県や自治体、土地改良区などが進めている急流を活用した小水力発電の取り組みが数多く報告されました。

 なかでも多くの事例報告がされたのは、農業用水を利用した小水力発電です。小水力発電の推進には、水利権の調整が大きなハードルとなっていますが、水利権を持つ土地改良区が発電事業者となったり、事業に協力して小水力発電所を建設し、かんがいポンプなどの水利施設の維持管理費に充当している報告が相次ぎました。

 また小水力だけでなく、再生可能エネルギー政策全体を検証し、地域の自立にどう生かすかという議論も活発に行われました。「エネルギーの地域自立を考える」をテーマにしたパネルディスカッションでは、パネリストの一人として環境経済学者で千葉大学教授の倉阪秀史さんが登壇。「これからの社会は、TPPに参加して大量生産したものをグローバルに流通させるような社会ではなく、持続可能で、地域風土に根差した地域資源をいかして、内需で国の経済を支える社会にしていくべきではないか。再生可能エネルギー産業は、風土の守り手である農林漁業に新たな収入源を付け加えることができる」と述べ、倉阪さんらが提唱している、地域内でエネルギーや食糧を自給することのできる「永続地帯」という考え方を紹介しました。

 導入の担い手になる組織が必要

 2日目は4つの分科会を開催。第2分科会は地域での自然エネルギーの利用をテーマに討論しました。

 各地で自然エネルギー導入のプロジェクトにかかわってきた環境エネルギー政策研究所の山下紀明さんは、さまざまな事例を紹介しながら、「地域で自然エネルギー利用を実現するには、導入の担い手となるプロジェクト組織が必要だ」と強調。「補助金を受けるのはよいが、その後、事業として成り立たせていくことが持続のポイント。同時に、地域での合意形成が非常に重要で、住民自身が自然エネルギーの恩恵や利益を受け取れる仕組みにしなければならない」と述べました。

 農業用水を利用した小水力発電プロジェクトを推進している市民組織「黒部川扇状地研究所」の吉島雄一さんは、子どもの環境教育に小水力発電を活用している様子や、水利権申請を巡る行政との折衝の苦労などを語りながら、「手さぐりでも行動し始めたら、専門知識を持つ業者や研究者など知恵を出してくれる人が集まってきて、プロジェクトが進展している」と報告しました。

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農業用水を利用して富山県が設置した仁右ヱ門用水発電所(富山市)

 コーディネーターを務めたジャーナリストの本橋恵一さんは討論のまとめで、「自然エネルギーは自立分散電源。私たち市民・住民が主人公になって、自らの手でエネルギーを作り出そう」と呼びかけました。


小水力発電とは…

 明確な定義はありませんが、日本ではおよそ2000キロワット以下の水力発電を総称して「小水力発電」といいます。大規模ダムなどに河川の水を貯めることなく、川の流れや落差を利用して発電する方式のため、自然環境に負荷をかけず、CO2も排出しない再生可能エネルギーの一つです。

 長所としては、昼夜、年間を通して安定した発電ができることで、発電量の変動が少ないなどの利点があります。基本的に落差と流量のある所であれば、一般河川、砂防ダム、治山ダム、農業用水路など場所を問わず発電できるので、地産地消・地域分散型エネルギーでもあります。

 短所は、河川を利用するため水利権の調整が難しく、河川法などの法的手続きが煩雑であるなどの点があげられます。また平野部と山間部では、発電に利用できるエネルギー量「包蔵水力」に大きな差があり、経済性も条件により大きく異なります。

(新聞「農民」2011.12.5付)
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2011年12月

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