放射能汚染と食べ物
いま何が必要なのか
日本大学准教授 野口邦和さんが特別セミナー
“汚染への不安”質問あいつぐ
見本市では、「放射能汚染と食べ物 いま何が必要か」をテーマに、日本大学准教授の野口邦和さんを講師に招き、特別セミナーを開催。消費者や学校栄養士、業者など会場いっぱいの80人を超える参加者が、熱心に耳を傾けました。
野口さんは、“放射能と放射線の違いとは?”といった基本的な知識をわかりやすく解説。そのうえで「たしかにセシウム137の半減期は30年だが、福島の空間放射線量が半減するのに30年かかるわけではない。放出されたセシウムの半分は半減期2年のセシウム134だから、総線量はあと3年で半減し、6年で4分の1に減る。ここ数年の過ごし方が重要だ」と述べ、「外部被ばくと内部被ばくの総量を下げることが、当面の緊急課題だ」と強調しました。
また食品の放射性物質汚染について、現行の暫定基準が定まった過程を解説し、「これは、原発事故が起きたという現実を踏まえた“がまん基準”。しかし事故後8カ月が経ち、実際に出回っている農産物の濃度は基準値の10分の1以下が大部分と、非常に低い」と指摘しました。また「汚染の実態からいって、今の基準値は高すぎ、下げる必要がある」と述べました。
会場からは質問も数多く出されました。
「輸入食品の方が安全だという人もいるが、本当か」という質問には、野口さんは「食べ物の安全性には残留農薬などの問題もある。放射能だけで判断せず、総合的に判断することが大切だ」と回答。また学校給食の調理師からは、「区は給食食材の検査を1週間に1校しか実施していない。これで安全が守れるのか」という質問が出され、「出回っている食品の濃度は低く、実際には問題ないものがほとんど。あちこちの区で検査すれば全体として濃度が低いことが明らかになる。大丈夫というためには、一度は検査してみることが重要だ」と答えました。
また多くの原発を抱える福井県の参加者は、原発事故を想定した避難訓練が強化されていることについて質問。「放射性物質の飛散は風向きで変わる。福島の教訓を踏まえて、原発からの距離で同心円状に避難するというような対策は見直すべき。原子力安全庁を創設するなどの組織再編もその一環として進めるべきだ」と指摘しました。
参加者からは「とても参考になった。これまで一生懸命に本や新聞を読んできたが、講演を聞いてとても安心した」との感想も寄せられました。
(新聞「農民」2011.12.5付)
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