「農民」記事データベース20111121-998-01

TPP交渉への参加方針に
抗議し、撤回を求める

2011年11月11日
農民運動全国連合会会長 白石  淳一


 一、11月11日、野田首相は「TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加に向けて各国と協議に入る」と表明した。農民連は、万感の怒りを込めて抗議し、方針の撤回を要求する。

 一、TPPへの参加を許さないたたかいは、政府や財界、マスコミの分断策を乗り越えて国民的規模に発展している。世論調査では、9割の国民がTPPについて政府の説明が「不十分」と答え、圧倒的多数の国民が反対している。過半数を超える国会議員が反対署名の紹介議員に名前を連ね、44道府県議会と8割を超える市町村議会が反対ないし慎重な判断を求める意見書を採択している。民主党「経済連携プロジェクトチーム」の結論は、反対意見が多数であるとし、政府に慎重な判断を求めるものであった。連立与党を組む国民新党も強く反対した。

 野田首相がこうした国民の声を無視し、国会議員はおろか、与党、閣内さえ一致できないTPP交渉への参加を強行したことは断じて許すことはできない。民意を無視する政治に国民の命運を託すことはできない。野田内閣の退陣を要求する。

 一、TPPに参加することには何ら大義がない。政府や財界は、「乗り遅れるな」「アジアの成長を取り込む」などとTPPに参加すれば経済が成長できるかのような幻想や、国益を損なうなら交渉から離脱できるかのような欺まんを流布してきた。

 しかし、関税と非関税障壁の撤廃を原則とするTPPによってもたらされるものは、農業への壊滅的打撃にとどまらず、医療、金融、共済、労働、公共入札、食の安全など、国民生活のあらゆる分野に影響が及ぶ危険性が高いことは、数少ない政府の資料によっても明白となった。これは、大震災と原発事故からの復興にとっても重大な障害となる。さらには、これまでの日本の文化と歴史、風土のもとで築いてきたシステムやルールがアメリカ型に置き換えられ、国家主権を売り渡すことにほかならない。

 こうした重大な問題をひた隠しにし、国民の不安や疑念にまともな説明もせずに、国民生活と国益の根幹にかかわるTPPへの参加を決めたことは、ファッショ的暴挙といわなければならない。

 一、TPP交渉への参加の検討は、3・11東日本大震災と福島第1原子力発電所事故によって、事実上、棚上げされてきた。大震災からの復興は進まず、原発事故は収束の目途さえ立っていない。野田内閣がTPP参加に向けて暴走したのは、財界の執ような要求に加えて、国連総会の際にオバマ大統領から「日米同盟の戦略的課題」だとしてTPP参加の「結論」を迫られたからにほかならない。

 自らの国際的地位の低下に危機感を募らせるアメリカは、日本を拠点にして新たな経済圏域をアジア・太平洋地域に確立しようとしている。そして、深刻な経済危機を打開する「輸出2倍化・雇用拡大戦略」に道筋をつけて、来年の大統領選挙を有利にたたかおうとしている。TPPはその足場でしかない。野田内閣が、失うものが余りにも大きいTPP交渉への参加を決めたことは、日米軍事同盟にいっそう傾斜して、ひたすらアメリカの利益に奉仕する屈辱的なものである。

 一、たたかいはこれからである。政府は交渉への参加を決めたが、交渉参加には9カ国の承認が必要となる。アメリカとの関係では、2国間の事前協議をやったうえで、最低でも90日かけてアメリカ議会の同意・承認が必要とされている。アメリカは、これまでも日本に対して対日要求報告書を繰り返し突きつけ、貿易の制限を取り払うよう要求している。二国間協議では、対日要求の受け入れを迫られることは必至である。受け入れなしには日本のTPP交渉参加の承認は得られないことは明らかであり、事前交渉の段階で丸裸にされる危険がある。

 農民連は、TPP交渉への参加方針の撤回を重ねて要求するとともに、TPP参加を阻止するために、これまでの国民的たたかいのさらなる発展に全力を尽くす決意である。

(新聞「農民」2011.11.21付)
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2011年11月

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