アメリカ産牛肉の輸入規制緩和
米国の圧力で審議会議論始まる
10月31日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会で、BSEの安全対策を見直し、「月齢20カ月以下」に限っているアメリカ・カナダ産牛肉の輸入規制を緩和する議論が始まりました。
これは9月の日米首脳会談で、アメリカのオバマ大統領から牛肉の輸入規制を撤廃するよう要求され、野田首相が「日米双方が受け入れ可能な解決に向けて(日本国内での準備を)継続していく」(9月22日付日本経済新聞)と請け合ったことから、急浮上しているもの。一部報道では野田首相はAPECハワイ会合の際に予定されている日米首脳会談で、緩和に向けた国内手続きの進展具合を「報告する予定」と報じられており、TPP交渉参加の議論とあわせて早くも「食の安全」が脅かされる事態が進んでいます。
現在BSE対策は、国産牛は「21カ月齢以上」が検査対象とされていますが、国は検査の補助金を打ち切り、実際には全都道府県が全頭検査を実施。また輸入条件は「20カ月齢以下」とされています。しかしOIE(国際獣疫事務局)が2007年に「月齢にかかわりなく輸出できる」とアメリカを認定したことから、アメリカはこれまで日本に対し、牛肉の輸入規制を緩和するよう何度も要求してきました。
10月31日の審議会では、検査基準の緩和を急ぐ厚労省が「世界でも、日本国内でも、BSEの発生は大きく減っており、リスクも低い」「食肉のBSE検査をしているのは日本とEUだけで、世界各国やOIEと比較しても日本の基準はたいへん厳しい」などと説明し、緩和する方向で議論するよう、求めました。
委員からは、「緩和の議論ばかりが先行している」と指摘する声は出されたものの、緩和すること自体への疑問や否定的意見は一切出されず、アメリカの圧力で日本の安全基準が変えさせられようとしていることに疑念を呈する意見もまったくありませんでした。
食品・放射性物質の規制値
暫定基準の強化了承
審議会
また同審議会では、牛肉の規制緩和の議論に先立って、食品に含まれる放射性物質の規制値について議論しました。
審議会では、内閣府の食品安全委員会が「内部被ばくによる生涯累積線量が100ミリシーベルト以上あると健康影響がある」とした答申(10月27日)を受け、この範囲に収まるよう、「現在の暫定基準となっている年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに強化する」との方針が了承されました。
今後は、専門家の委員によってさらに個別の食品ごとの規制値が検討され、文部科学省の放射線審議会の検討を経て、新たな規制値となる見込みです。
(新聞「農民」2011.11.14付)
|