「農民」記事データベース20111107-996-11

福島県北農民連・あんぽ柿農家100人

東電 全面賠償と年内支払い確約

“力合わせた運動の成果だ”


 福島県北農民連は10月24日、伊達市保原町中央公民館で、加工自粛・出荷停止となったあんぽ柿の全面賠償を求める集会を開き、収入の道を絶たれた生産者ら約100人が参加。東京電力側と直接交渉を行いました。

 福島県は10月14日、伊達地方で生産される柿を原料とする「あんぽ柿」(干し柿)について、乾燥加工により放射性セシウムが濃縮され、食品衛生法の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超えたため、伊達、桑折、国見の3市町と生産者団体に加工自粛を要請しました。

 はじめに、県北農民連の大橋芳啓会長が、「加工自粛となり、原料柿を作る農家、加工業者、販売業者をはじめ、手伝いのパート、段ボール業者など多くの人が困っている。地域経済を守っていくためにも全面賠償を勝ち取りたい」とあいさつしました。

 その後、東京電力福島補償相談センターの葛城真治部長ら5人が謝罪した後、賠償方法などを説明し、「誠心誠意、損害賠償請求に応じていく」と回答。会場から「農家は年末に、融資の返済や資材代金、共済掛け金などの支払いが請求される。12月20日ころまでには賠償金を支払ってほしい」と要望すると、東電側は「11月15日までに請求すれば、特例で12月20日ころまでに支払う」と再度回答し、通常の手続きよりも早く支払われることになりました。

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東電の説明に「きちんと賠償してくれ」と声をあげる参加者

 また、損害を算出する出荷量や単価についても、過去3年のうち最も売り上げが良い値段を適用することなどを認めさせ、廃棄処分の費用や原料柿の皮むきなどパート・加工業者の賃金についての賠償にも相談に応じるなど、東電側は全面賠償を約束しました。

 この集会には、農民連会員以外の生産者も多数参加し、「説明や請求書の資料だけでは分からない」「特産品のあんぽ柿を作る喜びを奪われ、本当に悔しい」「来年は出荷できるようにきちんと除染してほしい」「どんなに重労働か、東電社員も柿の収穫に来てくれ」など、怒りの声と切実な要求が相次ぎました。

 さっそく地域ごとの説明会・記帳会に取り組む県北農民連の服部崇事務局長は、「今日の交渉で、全面賠償と『年内支払い』を約束させたことは力を合わせた運動の成果です。これをあんぽ柿だけの特例にせず、『本払い』の賠償請求にも適用させるよう、広く農家に呼びかけて運動を強めたい」と話しました。

 農民連の賠償請求運動は、まわりの農家からたいへん注目されており、今回の集会は今後の運動にはずみをつけるものとなりました。

 来年も作りたい除染しっかりと

 あんぽ柿を年間に約15トン生産してきた国見町の市川厚一さん(57)は、「モモの値段もひどくて、なんとかあんぽ柿で生活を支えられればと思っていたら、加工自粛で収入の道がまったく絶たれてしまった。東電は一日も早く損害賠償をしてほしい。来年も生産を続けるためには、加工自粛となっても実をつけた柿を放っておくわけにはいかない。収穫しても鳥のえさになるだけで、なんともむなしい作業だ。来年はかならずあんぽ柿を作れるよう、園地の除染をしっかりやってほしい」と訴えています。

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収獲まぢかの柿を手に、あんぽ柿がつくれず落胆する市川さん

 市川さんは集会にも参加し、東電に胸の思いをぶつけました。

(新聞「農民」2011.11.7付)
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2011年11月

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