タイの大洪水が教えてくれたもの農民連参与 山本 博史
タイは、ずっと昔から洪水の国だった。 上流の4つの川が合流して、中部平原でメナム(河)チャオプラヤとなり天使の水の町クルンテープ(バンコク)に流れつく。 毎年10月に上流から1カ月かけてやってくる洪水が年ごとに豊かなデルタ(沖積土)を形づくり世界最大の米輸出国タイを育ててくれた。
1980年代半ばになって、タイの工業化が本格化した。しかし、工業団地の多くは外貨獲得のために「港に近い河口デルタの平坦(たん)地」につくられた。 国内で最も優れた稲作地帯が、次々と工場団地に姿を変えた。
アユタヤからバンコクまでのメナムデルタに集中する日系企業470社の工場が洪水で操業停止になった。 しかし、洪水の歴史は工業化の歴史よりも長い。 経済性を優先し、安い土地、安い原料、安い税金、安い労働をねらって次々に進出した日系企業は3000社以上。自然の条件と農業を無視・軽視して経済性だけを求めてやってきた。
押し寄せる洪水で、池になった道路で水遊びする子どもたち。 洪水こそが、豊かな稲作の母親。「50年ぶりの大洪水」は、私たちにタイ本来の姿を教えてくれる。 (元JICA=国際協力事業団=専門官)
(新聞「農民」2011.11.7付)
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[2011年11月]
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