「農民」記事データベース20111107-996-01

TPP交渉どころでなく
復興・原発事故収束が第一

JA全中参事 馬場利彦さんに聞く

 TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加をめぐって、緊迫した事態を迎えています。JA全中の馬場利彦参事に話を聞きました。


“参加するな”の一点で協同広げ
断念まで徹底的にたたかいぬく

 急いで結論を出すべきでない

画像 ―野田首相や民主党首脳部は、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)ハワイ会合を前に結論を出そうと、期限を区切ってTPPへの交渉参加を前提に議論を進めていますが…。

 私たちはこういう事態をたいへん危ぐしています。マスコミ、特に全国紙はいまだに「農業対工業」という図式を描いていますが、地方の新聞はほとんど反対です。TPPに参加するかどうかは、「国のかたち」をこわしかねない大問題なわけです。ぜんぜん情報も不足しているし、農業の問題だけじゃないという議論も始まったばかりです。急いで結論を出すべきではありません。

 政府は「資料」として、9カ国によるTPPの討議状況と日本政府として考慮すべき点を明らかにしましたが、「ようやく公表したか」という思いと、たとえば医療の分野では「議論の対象外になっている」とするなど、その内容はあまりにも杜撰(ずさん)すぎます。政府の「資料」では、「そういう問題がでてきたら、慎重に対応する」などとなっていますが、これではなんの説明にもなっていませんし、何の確約もありません。

 アメリカから次々強い圧力が

 ―9月の日米首脳会談で、野田首相はオバマ大統領からかなり強力に迫られたのではないでしょうか。

 沖縄の普天間基地の問題とからめて、どこまでTPP参加やアメリカ産牛肉の輸入緩和について話し合われたのか、十分な情報は持ち合わせていませんが、たしかにあの首脳会談からアメリカの意向にそって急速に事態が進展しています。そして、経団連からの圧力も相当なものです。

 たとえ野田首相が「交渉参加」を表明しても、それで終わりというわけじゃない。私たちが危ぐしていること、つまり「参加表明」が、これまで「多様な農業の共存」を主張してきた日本政府の姿勢そのものを大転換することになります。

 アメリカはこれまで日米「構造改革」などの会議で、郵政民営化などあらゆる分野にわたって規制緩和を求めてきました。日本はTPPに参加する国のなかで最も大きな市場になるわけですから、TPPの議論の「対象外だ」などと言っている分野でも、次々にアメリカから要求が突きつけられてくるでしょう。韓米FTAの内容を見れば明らかです。

 11月8日には6000人集会

 ―こうした事態を重視して、JA全中としては重大な決意で取り組みを強めているわけですね。

 そうです。全国会議員への国会請願の働きかけや地方での大規模な集会、新聞への広告、街頭での宣伝、国会前でのすわりこみなど、総力をあげて取り組んでいるところです。広告のキャッチフレーズは「復興より先に、やるべきことはないと思う」です。被災地のことを考えたら、TPPどころではないですよ。今やるべきことは、復興と原発事故への対応でしょう。それが世界に示す日本の真の姿ではないでしょうか。

 APEC直前の11月8日には、東京・国技館で6000人規模の大集会を計画しています。最近、世界的にも弱肉強食のシステムに対して市民レベルの集会やデモが広がっています。ぜひ、「TPP交渉参加反対!」の一点で協同を広め、目的が達成されるまで徹底的にたたかっていきましょう。

(新聞「農民」2011.11.7付)
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2011年11月

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