本の紹介
大嶋茂男著
協同運動と新社会システム
震災後の復興ビジョンを
構築するための良い参考書
市民運動・アソシエーション(協同体)運動を55年間続けてきた大嶋茂男さん(現在、NPO中小企業・地域振興センター理事長、農学博士)は、東日本大震災と福島原発事故の反省に立って、きっぱりと脱原発の道を歩み、3つの条件を満たした新しい社会を必ず生み出さなければならないという思いに至りました。
3つの条件とは、(1)「人類の維持可能な発展の道」の実現をめざす、(2)子ども世代に、放射能汚染のような人類にとって解決不能なことを絶対に残さない、(3)すべての人の文化的生存権を守り、人間にふさわしい仕事を保障すること。本書ではその道筋を具体的に示しています。
大嶋さんは、その柱となる持続可能を保障する経済システムとして、資本主義の自由保障と市場原理主義に基づく経済システムではなく、協同経済システムが先行し、公共経済システムの比重が高まり、それを市場経済システムが補完するという新しい経済システムを提唱しています。
こうした視点に立って、第3章では「金融資本・大資本の自由な活動を保障するTPP(環太平洋連携協定)―その参加阻止なくして、新しい社会システムなし」と題し、TPPの本質や財界のねらい、新しい社会システムへの弊害などを論じています。
国連は来年の2012年を「国際協同組合年」と定め、協同組合の普及を図ろうとしています。この時期に協同組合を中心とした社会システムの概要を論じた本書の出版は、タイムリーといえるでしょう。震災後の復興ビジョンを構築していくうえでも参考にしたい本です。
▼定価1500円+税
▼合同出版 TEL 03(3294)3506
(新聞「農民」2011.10.31付)
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