福島県北農民連
モモ生産者20人
東電から全面賠償かちとる
農民連の請求方法で支払い確約
農民連の請求運動 地域で
注目集まり新加入者続々
福島第一原発事故の「風評被害」の請求運動をすすめている福島県北農民連のモモの生産者20人に対し、東京電力は10月14日、請求額の満額を支払いました。今回の損害請求は8月末までのモモの風評被害の分だけですが、支払い総額はおよそ4000万円に上ります。「農協を通さず個人で賠償請求しても、本当に賠償されるのか」と、福島県内でも多くの注目が集まっていた農民連のこの請求運動に対し、いち早く、しかも「全面賠償」されたことは、深刻な風評被害に苦しむ多くの生産者にとっても、大きな励ましとなっています。
一歩も引かずに
さらに今回の「全面賠償」で画期的だったのは、東電の指定した請求書の書式を一切使わず、農民連の賠償の考え方に基づいて証拠資料を東電に提出し、支払われた、ということです。東電はこれまで農協や自治体を通さず個人で請求しようとしている被害者に対し、煩雑極まりない計算とぼう大な証拠書類の提出を要求し、このやり方に従わない請求には応じないとの態度を貫いてきました。しかし交渉や抗議行動など「即刻、全面賠償」を求める農民連の粘り強い運動の結果、今回の賠償金支払いに追い込まれたのです。
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宅急便の伝票の束を示しながら東電社員(手前)に請求内容を説明するモモ農家 |
とくにその大きな契機となったのが、8月31日に行われた福島県農民連の交渉でした。「もう一刻も待てない。いつ支払うのか聞くまで、帰らない」「一社員が即答できないと言うなら、今、この場で責任者に電話しろ」と一歩も引かない激しいやり取りとなり、最後には東電本社の賠償問題責任者である廣瀬直己常務取締役が電話で回答。交渉時間は6時間を超えました。
支払い期日確定
こうした運動の結果、当初、まったく明らかにしなかった支払い期日が10月14日に確定され、実際の支払いに向けて提出書類の確認作業が進められてきました。また今後の賠償請求についても東電の書式ではなく、農民連の請求方法で賠償されることが確約されたのも大きな成果です。
福島県北農民連の賠償請求の運動は、農民連会員のいない地域でも大きく注目され、「うちの地域でも説明会を開いてほしい」という声が続々と寄せられているほか、会員数も最高記録が日々塗り替えられています。農民連に寄せられる生産者の思いについて県北農民連事務局長の服部崇さんは、「今回の全面賠償は本当に大きな成果です。でも大切なのはお金だけじゃない。農民の作る喜びや農地を汚された、この怒りを賠償請求に託したいという痛切な思いを感じます」と言います。
運動はこれから
果樹地帯の福島県ではモモに続いてナシ、ブドウ、リンゴと果物の旬がまだまだ続きます。特産のあんぽ柿は干し柿にするため放射性物質の濃縮が懸念され、今年は全量出荷自粛が決定しているなど、「風評」とはいえない被害も深刻化しています。「次はリンゴやお米と、請求運動はまだ始まったばかり。農民が生産を続けられるよう、今回の全面賠償の成果を力に、もっと仲間を増やしたい。きれいな福島を取り戻すまでたたかい続けます」と服部さんは力強く話しています。
(新聞「農民」2011.10.24付)
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