自然エネルギーの可能性と市民の役割
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エネルギー転換には市民の主体性が重要
経済に悪影響はまちがっている
「気候ネットワーク」という環境NGOが「今すぐにでも日本の電力の25%を再生エネルギーでまかなうことが可能だ」という内容のリポートを発表しています。このリポートは、環境省や風力発電協会、地熱学会などが自然エネルギーの種類ごとに「これくらいは今の技術水準でも実現可能」とすでに公表している試算結果を合計して、自然エネルギー全体の可能性を検証したもので、今でも日本の電力の25%を再生エネルギーで供給でき、それにかかる追加的費用も現在の電気代の1割増ですむ、と試算しています。
これは、財界などがよく使う「自然エネルギーは高いので、日本経済に悪影響を与え、工場が海外に逃げていく原因になる」という脅し文句が、まちがいだということを示しています。1割の電気代の値上がりが、どのくらい製造業に影響を与えるのかを調べてみたのですが、製造業の生産コスト全体への影響はなんと0・13%のコストアップにしかなりません。一方、いま円高が大問題になっていますが、為替相場で1ドル10円上がると13%ものコストアップになります。日本の企業はこの為替環境のなかで営業していることをかんがみれば、電気料金1割の値上がりが、企業の海外移転の理由にはならないのではないでしょうか。省エネや自然エネルギーへの投資支援策をしていけばよいのだと思います。
固定価格買取制度は通ったが
自然エネルギーの活用を進めるには、自然エネルギーで発電された電力を高く買い取る固定価格買取制度が重要ですが、菅前首相の置き土産で、この法案が成立しました。しかし買い取り価格が決まっていないことや、買い取る電力の量に上限を設けることができるなどの問題点が残っています。
私たち市民は、政府に固定価格買取制度の価格や量を十分なものにするよう求めていくと同時に、自治体などとも協力しながら自然エネルギー導入の担い手を広げていくことが求められています。自然エネルギーへの転換には、市民、地域住民の主体性が何より大切です。
(おわり)
(新聞「農民」2011.10.17付)
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