公害地球懇シンポから
自然エネルギーの可能性と市民の役割
(上)
公害地球懇(公害・地球環境問題懇談会)は9月24日、東京都内で「いまこそ原発から自然エネルギーへ――市民が開く自然エネルギーへの時代」をテーマに、シンポジウムを開催しました。このなかで、自然エネルギーの技術開発を研究している東京大学大学院生の佐川清隆さん(仮名)が、特別報告しました。その一部を紹介します。
特色生かした組み合せが重要
導入しやすい太陽光発電
地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーは、173兆キロワット、原発5000基分というぼう大なものです。人類が使う総エネルギーは120億キロワットですので、その0・01%を活用するだけで、量的にはまかなえる計算です。
市民がもっとも導入しやすいのは、太陽光発電です。発電パネルはだいたい1平方メートルで100ワット、最近の技術では150ワットほど発電でき、約1万平方キロメートルで日本の総発電量と同程度の発電ができます。短所としては、晴れた昼間しか発電できないことですが、電力需要がもっとも高まるのは夏の猛暑日で、こういう日はおおむね快晴ですから、電力不足への太陽光発電は非常に有効です。
ドイツでは昨年1年間で700万キロワットの太陽光発電を導入しており、日本でも十分な促進政策を導入すれば、来年夏までに福島第一原発の発電容量と同程度の470万キロワットの発電が可能です。
急成長している世界の風力発電
世界でいまもっとも伸びているのが、風力発電です。とくに中国では昨年1年間で日本全体の電力系統容量とほぼ同じ約2億キロワットもの風力発電が導入されました。風力発電は発電コストが比較的低く、日本でも電力量の数十〜数百%もの可能性があると、環境省が試算しており、市民出資による風力発電が各地で取り組まれています。
日本最西端の沖縄県与那国島は、人口2000人弱の小さな島ですが、この島では使用電力の25%が、660キロワットという中型の風力発電2基でまかなわれています。こういう事例は、自然エネルギーが地域のエネルギー源としてどれほどの可能性があるのか、実感するのに役立ちます。
|
与那国島の風力発電 |
このほか地熱、バイオマス、中小水力発電などがありますが、これらの長所は、発電量が比較的安定しており、出力をコントロールすることが可能なところです。こうした特色を生かして、地域に合った再生エネルギーをミックスさせる、さまざまな種類の再生エネルギーを組み合わせることによって、電力需要の大部分を供給することも現実的になるのです。
(つづく)
(新聞「農民」2011.10.10付)
|