「農民」記事データベース20111003-991-07

本の紹介

タネが危ない
野口勲 著


ミトコンドリアが鍵を握る
F1種の品種改良への疑問

画像 30年以上前になるだろうか、ホウレン草のF1種が普及し始めたころ、固定種の畑にはムクドリが食べに来るが、F1種の畑には来ない。こんな経験から品種改良への疑問を持つようになった。最近、その疑問に答える一冊の本を見つけた。

 著者の野口さんは少年時代、手塚治虫の漫画に出会い貸本劇画にはまった。漫画編集者をめざして大学に進学したが、手塚先生のそばにいたい一心で中退し、「虫プロ出版部」に就職した。

 野口さんは、「手塚漫画は命の尊厳と地球環境の持続。どんな生命も等しく大切であり、お互いがつながっている。だから人間の価値判断で、自然界に回復できないダメージを与えてはならないと訴えている」と言う。

 だから種屋の三代目として「雄性不稔という花粉のできない突然変異の個体から作られるF1種は、子孫を残せないミトコンドリア異常の植物だけが、たった1粒で1万、1億、1兆、1京と無限に増やされて世界中の人々が食べていることを、どれだけの人が知っているのだろう。動物に異常は現れないのだろうか。こんな素朴な疑問をしばらく追求してみた」と、本書の「はじめに」で述べている。

 なかでも第2章「すべてはミトコンドリアの采配」では、小見出しの順に「生命が続いていくということ」「タラコは吉永小百合の卵子何年分?」「タラコ一腹三十万粒、人の一生の卵子は四百個」「二十万年前から連綿と続くミトコンドリア遺伝子」「人はミトコンドリアによって生かされている」「植物にも動物にもミトコンドリアがいる」と続く。野口さんはそこで、地球上の生命誕生とその進化をたどり、「ミトコンドリアが、いかに我々の生命にとって大事なものか認識していただいた上で」、野菜の品種改良を論じている。

 よりおいしい野菜生産をめざすみなさんに、ぜひ一読をおすすめしたい。

(農民連本部 齋藤敏之)

▼定価 1600円+税
▼日本経済新聞出版社 TEL 03(3270)0251

(新聞「農民」2011.10.3付)
ライン

2011年10月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2011, 農民運動全国連合会