「農民」記事データベース20110926-990-05

台風12号豪雨災害
和歌山リポート

大きな岩が道路に、田畑に…
家も車も土砂に押しつぶされた

関連/見直そう都市農業の役割


 紀ノ川農協の宇田篤弘組合長は9月10日、救援のため、豪雨災害の被害が甚大だった那智勝浦町に入りました。そのリポートです。

 那智勝浦町色川地区には、紀ノ川農協の「ふうの丘直売所」に“熊野のお茶”を出している生産者グループ「色川両国園」があります。連絡がまったくつかなかったので、紀ノ川農協から車で5時間ほどかけて支援に行きました。

 両国園は、いまから30年ほど前に、「安心して飲めるお茶をつくりたい」との思いで、無農薬の茶を栽培し、自園自製のお茶工場を創設しました。いまでは、外山哲也さんを代表に8人の茶葉生産者が創設当時の思いを大切に茶の栽培に取り組んでいます。

 また色川地区は、Iターンのメッカとしてちょっと有名なところです。30年ほど前に、数組の家族が豊かな暮らしを探し求め入植したのがきっかけで、地元の人と新規入植者のドラマがはじまり、今では色川の人口の3分の1が新規入植者という村です。

 まだ手届かぬ地域も早急な救援が必要

 幸い、お茶の工場や事務所は大丈夫でした。事務所からさらに川上へ10分ほど行ったところに口色川という地区があり、ここは代表の外山さんらが住んでいる集落です。40〜50戸ということですが、土石流が発生して半数ほどの家が被災しました。倒壊に近い家もあり、家の中に土砂が流れ込んでいました。車も数台、土砂に押しつぶされていました。集落の人たちは避難していて全員無事でした。最初は地区の会館に避難していましたが、山の方から流れてくる水かさが増えてきたので高い所にあるお寺に避難したそうです。道路の水の流れが激しく、女性や子どもは大変だったそうです。

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土石流にみまわれた那智勝浦町色川地区

 被災した住民の方々は土砂を手作業でかき出していましたが、車の大きさほどの岩が道路や川、田畑を埋めていて、重機がないと除去できません。しかし、行政からは何の支援もないそうです。水や食料は大丈夫でした。被害の激しかったところはマスコミに報道され、救援も多く入っていますが、色川地区のような何の支援の手も届いていない地区がほかにもあると思います。早急な救援・復旧が求められています。


見直そう都市農業の役割

都市農地保全自治体協議会

東京でフォーラムを開催

画像 都内38の市区町で構成する都市農地保全推進自治体協議会は9月5日、都庁内でフォーラムを開き、生産者や消費者、行政・農協関係者ら約460人が会場を埋めました。

 主催者あいさつをした同協議会会長の志村豊志郎・練馬区長は、都内の都市農地がこの10年間で約1250ヘクタール(東京ドーム270個分)減少していることを指摘。同協議会副会長の保坂展人・世田谷区長が「生産緑地制度および相続税納税猶予制度の維持・改善をはじめ、都市農業振興政策の充実および都市農地の保全に資する都市計画法の見直しについても、強く国に働きかけていく」と、フォーラム宣言を読み上げました。

 都市農業のもつ多面的機能は…

 討論では、武蔵大学の後藤光蔵教授が、都市農業の多面的機能について問題提起。「農業・農地の多面的機能が具体的に住民に理解されることが大切だ」と述べ、こうした理解は、「体験し、参加することによって深まる。農家だけでなく、行政や住民の協力が必要だ」と訴えました。

 4人のパネリストが発言。体験型農園を通した地域コミュニティーづくりの実践を報告した立川市の農家、豊泉裕さんは、自ら食育関連施設「スマイルキッチン」を経営し、種まきから調理まで、住民が参加する場を提供しています。

 国分寺市の自治会防災推進委員の山根衛さんは、自治会と農家との間で防災協定を結び、一時避難場所の提供など、農家と連携した防災への取り組みを報告しました。

 日野市企業公社代表取締役の堀之内和信さんは、学校給食で地元産野菜などの利用率の向上に尽力。月末、地区ごとに農家との調整会議を行い、各学校の供給量を決定し、直接、学校栄養士に野菜をあっせんします。こうして2006年に15・0%だった利用率が09年には24・7%にまで引き上がりました。

 世田谷区の農家、大塚信美さんは、伝統野菜、大蔵大根の生産・普及に努めています。露地野菜にこだわり、収穫した野菜は、自宅前などで直売し、「顔の見える農業」にこだわっています。

(新聞「農民」2011.9.26付)
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2011年9月

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