本払いも1カ月ごとに支払え
合意書に追加請求可能を明記せよ
全面賠償に誠意を示せ
農民連が東電本社と交渉
関連/がれき処理・除染を直ちに
農民連は9月15日、福島第一原発の事故による損害賠償に関して、東京電力本社で交渉を行いました。
農民連は、(1)すでに必要書類を提出した請求については、10月の本払いに先延ばしにせず、即刻支払うこと、(2)本払いは3カ月ごとではなく、1カ月ごとに支払うこと。過度な添付書類の提出を要求しないこと、(3)JAなどの団体請求と個人請求の差別的扱いをしないこと、(4)風評被害回避のための検査費用も、原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」どおり、きちんと賠償すること、などの6項目を求めました。
東京電力・補償相談室の紫藤英文部長は交渉のなかで、10月から始まる本払いを前に、「9月21日に添付書類を含めて、書式を公表する」と答弁しました。福島県北農民連の服部崇さんは「東電は、モモの生産者の請求に対して“耕作証明書だけでなく住民票まで出せ”と言っている。耕作証明書には住所の記載もあるのに、なぜ住民票も必要なのか。こういう“過度な”書類の要求はやめてもらいたい」と要求。
茨城農民連書記長の村田深さんも「すでに仮払いの請求で、必要な証拠書類が提出されていることは、確認済みのはず。これ以上、何を提出しろというのか。もしさらに必要な書類があれば、10月1日の支払いに間に合うように、東電側が一人ひとりに再連絡するのがスジではないか」と詰め寄りました。
無条件に検査費賠償すべきだ
また本払いに必要とされる「合意書」には、「これ以上の請求はしない」との文言が盛り込まれますが、「支払い後であっても損害の請求漏れがあれば、追加請求できる」旨を明記するよう、強く求める声が多くの参加者からあがりました。
東電側は「追加請求にも応じる」と明言したものの、「書面に明文化はできないが、説明会などで知らせる」と回答。参加者から「東電の説明を聞く機会のない被害者もたくさんいる。合意書に明記すべきだ」と重ねて求めました。
また「農産物はありとあらゆる品目で“安全だ”という検査証明書の添付が求められており、業者に求められる前に検査しなければ取引が成立しない現状だ」「東電は“検査費用が必要だったかどうか確認する”と条件をつけるのではなく、無条件に検査費用を賠償すべきだ。その方がかえって風評被害の賠償を減らすことができるのではないか」との訴えもありました。
交渉では、「避難対象区域内の賠償はたいへん遅れているが、9月21日に発表する本払い請求の書式で、この区域内の農業損害も請求できるのか。農地も家もすべて失い、収入も断たれている。一刻も早く再出発できる賠償をしてほしい」という声や、「風評被害で価格が暴落しているモモの生産者がこれ以上続けられないと木を切って、イチゴなどの施設園芸に転換しようとしている。こうした費用も賠償してほしい」など、被災地の切実な声も相次ぎました。
東電側はこれらの点について、「この場では即答できない。後日文書で回答する」と約束しました。
福島・浜通り農民連
震災復旧で農水省要請
福島県の浜通り農民連は9月15日、農水省を訪れ、震災の復旧・復興について要請しました。浜通り地方は、震災から半年たっても、地震・津波被害、原発事故で、人の立ち入りが制限され田畑にがれきが散乱したままです。
参加者は、(1)速やかにがれき処理を行い、営農を再開できるようにすること(2)緊急時避難準備区域については、特別にきめ細かい測定を実施し、万全な除染対策をすること―などを求めました。
また、農水省は酪農や畜産に使用される粗飼料への運賃助成を打ち切ろうとしています。酪農家の杉和昌さんは、「行政による調査は、生えている牧草を刈り取って検査するので土壌が混入せず、放射性物質が検出されていない。しかし、草をロールするときに、汚染された土壌が巻き込まれて草に混入してしまうため農家は餌として使えない。ほかからの牧草の提供は引き続き必要だ。運賃への助成を継続せよ」と訴えました。
さらに、福島県が、ノリの養殖で知られる相馬市松川浦で、海底の土の放射能検査をしないとしている点について、「養殖業者は不安を抱えている。計測を実施せよ」と要求。農水省は「計測をした方がいいと思う。状況を調べて、水産庁に伝えたい」と答えました。
(新聞「農民」2011.9.26付)
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