「農民」記事データベース20110919-989-03

風評被害に苦しむ モモ農家

東電は即刻賠償せよ

福島県農民連 本社と緊急交渉


 出荷最盛期を迎えたモモの風評被害に対する賠償を求めて、福島県農民連は9月5日、急きょ上京し、農民連本部とともに東京電力本社に緊急の交渉を行いました。

 福島県では8〜9月にかけて特産のモモの出荷が最盛期を迎えています。しかし今年は、福島第一原発の事故の影響で、福島県産モモの価格は5キログラム600〜700円に暴落。出荷手数料を差し引いた生産者の手取りは100円ほどで、ひどい場合は出荷手数料にもならず、「農協も生産者に精算金を支払うこともできずに困っている」という厳しい風評被害に苦しんでいます。

 しかし東京電力は、「原子力損害賠償紛争審査会」の中間指針が示されたことから賠償方針を転換し、「これまで1カ月ごとに行ってきた賠償金の仮払い(ただし半額のみ)の受け付けを終了し、本払いのみに切り替える。ついては賠償請求の受け付けと支払いは3カ月ごとに区切って行う」と発表しました。しかしこれでは、生産者は通常なら8月中に入るはずのモモの収入はほとんどなく、賠償金の支払いは10月以降になることになってしまいます。

 福島県農民連は8月31日にも福島市内で東京電力の担当者を呼んで説明会を開き、本払いとして一律に3カ月先に先延ばしするのでなく、一刻も早く仮払い金を支払うよう求めました。東電は、廣瀬直己常務が直接電話で「善処」を約束しましたが、実務担当者と具体的な支払い方法で折り合いがつかず、今回の緊急交渉が設定されました。

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東電担当者に説明するモモ生産者

 交渉に参加した農家からは、「生産するには、肥料など多くの資材費がかかっている。その支払いができないではないか」「生産者も生活せねばならない。雇っている人にも給料を待ってもらっており、困っている」「たいへんな努力で比較的価格の良い贈答用などの産直を増やしてきたのに、原発事故で激減した。やむなく市場出荷したが、市場でも値がつかない。こういう被害も賠償してほしい」などの切実な声が上がりました。

 東京電力側は、「仮払いは打ち切り、本払いに切り替える」との姿勢は変えませんでしたが、「本払いでも書類審査などで支払いを遅らせないようにする」と約束。農協が「仕切り書(市場出荷の支払い額を示した書類)」を発行するのが9月22日ごろの見通しであることから、農民連は9月30日に損害賠償請求書を提出する予定であり、東京電力はこれに間に合うよう必要な添付書類を明らかにすること、また請求書提出の2週間後には賠償金を支払うよう努力することで双方が同意しました。

(新聞「農民」2011.9.19付)
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2011年9月

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