農民連ふるさとネットワーク
放射能汚染に強い関心
米屋さん 安全な米 安心して消費者に
米屋さんと生産者をつなぐ交流会 東京
関連/規定値以下なら安全といえるか
農民連ふるさとネットワークは8月21日、東京・文京区で「米屋さんと生産者をつなぐ交流会」を開き、215人が参加しました。今回は、放射能汚染や米の不安定な流通問題を反映して、例年になく多い参加者となりました。
生産者
食品分析センター検査を活用し
より安心を確保
昨年は暴落、震災後は暴騰
主催者あいさつした、ふるさとネットの堂前貢代表は、「昨年は『過剰』を理由に米価が暴落。ところが大震災のあとは『米不足』で一転して暴騰している。政府は備蓄米を一粒も被災地に出してこなかった。これは、政府が米の需給と流通に責任をもってこなかった結果だ。また政府は、米の先物取引を許可したが、生産者や業者のためになるのか。こうした点も含めおおいに交流したい」と述べました。そして「放射能汚染では、東京電力と国に損害賠償を求めるとともに、農民連の米については食品分析センターに設置する放射能検査機を活用して、食の安全を確保していきたい」と、協力を呼びかけました。
こんな時こそ顔のみえる関係強めよう
来賓として日本米穀小売商業組合連合会(日米連)の長谷部喜通理事長は、「放射能汚染がどうなるか、食料を扱う者として大変危ぐしている。一方、昨年産の米がなくなり、業者の中で不安が広がっている。一部の大手卸が米をにぎり、量販店では特売をしている。本日の交流会を通じて、お互いの顔の見える関係をさらに築いて、通年供給の検討など、農民連の米をさらに安定的に供給できるようはかってもらいたい」とあいさつ。
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たくさんの米屋さんがつめかけました |
また、東京山手食糧販売協同組合の石井忠裕常務理事は「大震災を契機に、米の先物取引やTPP参加も含め、米政策が大転換することもありえるのではないか。原発による風評被害などが起きないように、米屋さんは対面販売で、また私たち卸も米屋さんとよく相談しながら、消費者に正しい情報を提供し販売していきたい」と述べました。
このままいけば今年産は豊作に
その後、ほくほくネット(北海道・東北)、関東ネット、北陸ネット、兵庫・豊岡市でのコウノトリ米の取り組みなど、各産地から「田植えが一週間程度遅れたが、ここにきて平年並みに戻りつつある」「今年は昨年のような等級が悪くなるということもなく、このままいけば豊作が期待できる」といった今年産の作柄状況や、「放射能対策として、全生産者の米を食品分析センターで検査したい」など、安全確保への対応などについて報告しました。
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今年産の作柄を説明する北陸ネット(新潟)の鶴巻純一さん(右)と佐藤恒夫さん |
また会場では、支援野菜や加工品の取り組み、線量計の展示も行われました。
米屋の仲間と相談して対応
マルコー・幸米穀店(東京都立川市)の小林雅美さん
生井先生の話を聞きたいと思って参加しました。ベクレルとシーベルトの関係や、政府が示している暫定規制値をどう見るか、大変参考になりました。500ベクレルという規制値はいかにも高いという印象です。講演のあと、先生に「年間の被ばく限度の目安1ミリシーベルト以下なら安全といえるのか」と質問しましたが、「安全だ」という明確な回答はありませんでした。
お客さんにどう説明していくのか。精米したときに出る「ぬか」をどう処理するのか。たいへん悩ましい問題ですが、これから米屋の仲間とも相談しながら対応していきたいと思っています。
前例のない事態本当にきびしい
仲間米屋(沖縄県)の仲間朝宏さん
原発事故による放射能汚染の実態がわからず、どうやって消費者に売っていけばいいのか、という問題意識から、はじめて参加しました。
放射能汚染がゼロならば問題はないのですが、規制値以下の数字が出た時でも「食べて安全」といえるのか。消費者にどう理解してもらうのか。前例のない事態だけに、本当に難しい問題です。
うちは78の銘柄を扱っていて生産者とのつながりが強く、生産者のお米を売らなければいけないというプレッシャーもあります。ふるさとネットさんにはぜひ量を確保し、沖縄に送ってほしいと期待しています。
生井元教授が講演
今回の交流会では、放射能汚染への関心が高いことから、元筑波大学教授の生井(なまい)兵治(ひょうじ)さんが、「放射能汚染と食べ物」と題して特別に講演しました。
生井さんはパワーポイントを使いながら、田畑から作物へ放射性物質がどのように移行するかなど、原発事故による放射能汚染の実態を詳しく説明。政府が示している暫定規制値や米検査の方式を批判し、「暫定規制値以下なら安全といえるのか。米の汚染調査では、測定箇所がわずかできわめて不安だ」など、疑問を投げかけました。そして「たとえ暫定規制値以下でも数値を隠さず公表し、水田ごとのち密な定時・定点測定が必要だ。すべての田畑の検査を国・県に要求しよう」と訴えました。
(新聞「農民」2011.9.5付)
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