「農民」記事データベース20110829-986-02

原木シイタケ農家
農水省、東電本社と交渉

代替原木供給 調査中(政府)、検討する(東電)
出荷制限・自粛 損害賠償になりうる

関連/TPP参加でなく国民本位の復興策を

 福島県をはじめ宮城、岩手県から原木を購入してシイタケを栽培する農家らでつくる「原発事故問題原木しいたけ生産者連絡会」(事務局・奈良県農民連)は8月10日、農水省と東京電力本社を訪問し、安全な原木の確保と安心してシイタケを生産するための対策を講じるよう要請しました。和歌山、奈良、三重、茨城の5県と大阪府から生産者ら約20人が参加しました。


10月までに基準を示す

 来年の植菌までに間に合うよう対策を

 農水省では、「国産原木しいたけ生産者の会」の井上順一会長(奈良県吉野町)が「原木の伐採が10月ごろに始まり、来年の2、3月には原木に植菌します。安全なシイタケ原木の基準を早くつくり、来年の植菌作業に間に合うよう、対策をとってほしい」と要望しました。

 現在、林野庁は放射能の原木への影響について、東北・関東の9県40カ所で調査を行っています。交渉参加者は、遅くとも原木伐採時期の10月までに使用可能な原木の基準を設けるよう要求。林野庁は、その中身までは明らかにしなかったものの「10月までに基準を示したい」と答えました。

 また、代替原木を必要とするシイタケ農家に、国有林からの伐採を含めて国の責任で供給することを求めたのに対し、林野庁は「国有林を含めて可能かどうか調査中だ」と述べました。

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要請書を手渡す井上さん(立っている人、左側)=農水省

 さらに、出荷制限指示や風評被害などで出荷不能になった場合の損害賠償については「原子力損害賠償紛争審査会の『中間指針』にあるように国の出荷制限指示によるものであれば賠償の対象になる。風評被害についても、その品目が『中間指針』の賠償対象にないからといって対象外だとは限らない。原発事故と被害との間に相当因果関係があれば賠償対象になりうる」と答えました。

 東電はシイタケ生産の現場を見るべきだ

 次に、参加者は東電本社に移動し、風評被害や出荷不能による損害賠償、シイタケ不足による価格高騰分の補償などを求めました。

 代替原木を東電所有の山林からの伐採を含めて、東電の責任で供給するようただしたのに対し、東電は当初、「洪水や渇水の緩和、森林保全の必要性から供給は難しい」と難色を示していましたが、農民連の笹渡義夫事務局長が「林野庁も国有林からの代替原木の供給について調査している。汚染の原因をつくった東電も協力すべきだ」と反論。東電は「協力は可能だと思う。提案を検討したい」と答えました。

 茨城から参加した農家は、自主検査をしたシイタケから、食品の暫定規制値500ベクレルを超える放射性物質が検出されたため、出荷を自粛しました。その損害賠償について、東電は、私見としつつも「賠償すべきだと思う」と応じました。

 また、京都府が微量のセシウムを検出した福島産原木に対して、自主回収を業者に要請していることに対しても、東電は「賠償の対象になりうると思う」と述べました。

 ただし、東電が「1ベクレル検出されただけでは、健康上は問題なく、賠償の対象とはならない」という立場に固執したため、参加者は「たとえ1ベクレルでも消費者は不安に思ってしまう。原発事故がなかったら検出されない数値だ。取引停止などがあった場合、東電は損害賠償に応じよ」と訴えました。

 最後に、「放射能汚染でシイタケ農家は瀬戸際に立たされている、東電は現場を見るべきだ」と要求したのに対して、「現場を見させていただきます」と約束しました。


国民大運動実行委の国会前行動

TPP参加でなく
国民本位の復興策を

齋藤常任委員があいさつ

画像 農民連も参加する「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を」国民大運動実行委員会は国会終盤の8月17日、国会前行動を行い、300人が集まりました。

 農民連の齋藤敏之常任委員が主催者あいさつ。TPP(環太平洋連携協定)への参加でなく、農民・国民本位の復興策が必要だと語り、「国民の願いを国会に届ける運動を強めたい」と訴えました。

 他団体からも「TPP反対の署名が1万人以上集まった」(新日本婦人の会)、「自然エネルギーへの取り組みが地方から始まっている。脱原発の流れを自治体から」(自治労連)など、積極的な発言が相次ぎました。

 日本共産党の井上哲士参院議員が激励のあいさつをしました。

 最後に、参加者は、国会に向けて「くらしを破壊するTPPに参加するな」などと怒りのこぶしを振り上げました。

(新聞「農民」2011.8.29付)
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2011年8月

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